海外旅行中に救急対応が必要になったら
海外旅行中に急な病気やケガが起きると、「救急車はどう呼ぶのか」「どの病院へ行けばよいのか」「保険会社と病院のどちらへ先に連絡するのか」と迷うことがあります。
海外では、救急番号、受診の仕組み、医療費の支払い方法が国によって異なります。多くの地域では、旅行者が医療費をいったん支払う場合もあるため、緊急時の動き方と海外旅行保険の連絡先を出発前に確認しておくことが大切です。
この記事では、海外旅行中に救急対応が必要になったときの行動を解説します。
呼吸や意識がおかしいときは現地の救急番号へ連絡する

海外でも、生命に関わる可能性がある場合は、保険会社への連絡より先に現地の救急番号へ電話します。
救急要請を考えたい主なサインは、次のとおりです。
・呼びかけても反応がない
・意識がぼんやりしている
・呼吸が苦しそう
・唇や顔色が悪い
・強い胸痛がある
・けいれんが続いている
・大量に出血している
・重いアレルギー症状がある
・高い場所から転落した
・交通事故に遭った
・自力で動けないほどの強い痛みがある
救急番号は国や地域によって異なります。渡航前に外務省の海外安全情報や現地公館の案内で確認し、スマートフォンと紙の両方に保存しておきましょう。
通話では、落ち着いて次の内容を伝えます。
・現在地
・患者の年齢
・主な症状
・意識と呼吸の状態
・事故や発症の状況
・連絡可能な電話番号
・使用できる言語
ホテルにいる場合は、フロントへ救急車を呼んでもらう方法もあります。ツアー中であれば、添乗員や現地ガイドにも連絡しましょう。
救急車を待つ間は安全を確保して状態を確認する

救急車を要請した後は、まず周囲の安全を確認します。
交通事故や転落事故では、車道や不安定な場所に近づかないようにします。ただし、火災や車両の接近など差し迫った危険がなければ、重傷者をむやみに動かさない方がよい場合があります。
待っている間は、次の点を確認しましょう。
・呼びかけに反応するか
・普段どおり呼吸しているか
・出血が続いていないか
・症状が悪化していないか
・けいれんが何分続いたか
・使った薬があるか
出血している場合は、清潔な布やガーゼを傷口に当てて圧迫します。けいれんがある場合は、周囲の危険な物を遠ざけ、口の中に物や指を入れないようにしてください。
現地の救急指令員から指示があった場合は、その内容に従います。可能であれば、同行者の一人が患者のそばに付き、もう一人が入口や道路で救急隊を案内するとスムーズです。
緊急性が低い場合は保険会社やホテルへ相談する

意識や呼吸は安定しているものの、発熱、腹痛、嘔吐、下痢、発疹、捻挫などで医療機関を受診したい場合は、海外旅行保険のサポート窓口へ連絡します。
保険会社のサポートでは、契約内容に応じて次のような案内を受けられることがあります。
・受診可能な医療機関の紹介
・日本語対応が可能な病院の案内
・医療通訳の手配
・キャッシュレス診療の確認
・受診方法や必要書類の説明
・緊急移送や帰国に関する相談
ただし、補償内容やサービスは契約によって異なります。一般的な旅行キャンセル保険だけでは、海外での治療費や緊急移送費が十分に補償されない場合があります。出発前に、治療費と医療搬送が補償対象になっているか確認しましょう。
すぐに保険会社へつながらない場合は、ホテルのフロント、ツアー会社、現地ガイドへ相談します。ただし、意識障害や呼吸困難など緊急性が高い場合は、保険会社からの返答を待たず救急要請を優先してください。
病院では症状・薬・アレルギーを簡潔に伝える

海外の医療機関では、言葉の問題から症状をうまく説明できないことがあります。
受診時には、次の情報をすぐ提示できるようにしておきましょう。
・氏名と生年月日
・パスポート
・症状が始まった時間
・現在の症状
・持病
・服用中の薬
・薬や食べ物のアレルギー
・妊娠の可能性
・直前に食べたもの
・事故が起きた状況
・海外旅行保険の証券番号
スマートフォンに情報を保存するだけでなく、電池切れに備えて紙でも携帯すると安心です。薬は商品名だけでなく、成分名や用量が分かるようにしておきます。
旅行中に使う可能性がある英語表現として、次のような内容をメモしておくと役立ちます。
・意識がありません
・呼吸が苦しそうです
・胸が痛いです
・何度も吐いています
・強い腹痛があります
・この薬にアレルギーがあります
・この薬を毎日服用しています
可能であれば、医療通訳や翻訳サービスを利用しましょう。ただし、緊急時は完璧に説明しようとせず、症状、年齢、意識、呼吸、アレルギーを優先して伝えてください。
支払いと帰国に備えて書類を保管する

海外では、診察前に保証金やクレジットカードの提示を求められる場合があります。また、キャッシュレス診療に対応していない医療機関では、いったん自分で支払い、帰国後に保険金を請求することがあります。旅行者が医療費を自己負担する仕組みの地域も多いため、受診前後に保険会社へ支払い方法を確認しましょう。
病院では、次の書類を受け取って保管します。
・診断書
・診療明細書
・領収書
・処方箋
・検査結果
・画像検査のデータ
・医師の連絡先
・搭乗や帰国に関する診断書
領収書は原本の提出が必要になることがあるため、紛失しないようにします。スマートフォンで撮影し、家族にも共有しておくと安心です。
重症で現地の医療では対応が難しい場合は、別の都市や国、日本への医療搬送が必要になることがあります。緊急移送は非常に高額になる可能性があるため、十分な補償のある旅行保険が重要です。
まとめ:救急要請・保険会社・必要書類の順に動く

海外旅行中に救急対応が必要になったら、まず症状の緊急性を判断します。
基本的な行動は、次のとおりです。
・意識や呼吸がおかしい場合は現地の救急番号へ連絡する
・ホテルではフロントや現地スタッフにも助けを求める
・救急車を待つ間は安全と呼吸、出血を確認する
・緊急性が低い場合は保険会社へ受診先を相談する
・病院では持病、薬、アレルギーを伝える
・診断書、明細書、領収書を保管する
・緊急移送を含む保険の補償内容を確認する
大使館や総領事館は、緊急時の連絡支援や関係機関との調整などを行うことがありますが、医療費の支払いや保険会社の代わりを担う機関ではありません。困ったときの相談先にはなりますが、治療費や搬送費に備えるには海外旅行保険が必要です。
出発前に、現地の救急番号、保険会社の連絡先、宿泊先、パスポート情報、持病と薬の一覧を家族で共有しておきましょう。
参考文献
『海外旅行保険加入のおすすめ』(外務省 海外安全ホームページ)
https://www.anzen.mofa.go.jp/c_info/hoken.html
『海外で困ったら 大使館・総領事館のできること』(外務省 海外安全ホームページ)
https://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_02.html
『大使館・総領事館ができること・できないこと』(外務省)
https://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pdf/dekiru-koto.pdf