妊娠中の海外旅行では、「飛行機に乗っても大丈夫か」「現地で体調を崩したらどうすればよいか」と不安になることがあります。

妊娠経過が順調であれば旅行できる場合もありますが、妊娠週数、合併症、渡航先の感染症、現地の医療体制によってリスクは変わります。海外旅行を決める前に、自己判断だけで進めず、かかりつけの産婦人科へ相談することが大切です。

この記事では、妊娠中に海外旅行を考えるときの注意点を解説します。

旅行を予約する前に産婦人科へ相談する

妊娠中に海外旅行を考えたら、航空券やホテルを予約する前に、かかりつけの産婦人科へ相談しましょう。

妊娠週数だけでなく、これまでの妊娠経過、出血や張りの有無、胎盤の位置、血圧、貧血、持病、双胎妊娠などを踏まえて判断する必要があります。妊娠中の旅行が一律に禁止されるわけではありませんが、妊娠合併症がある場合は旅行を控えた方がよいことがあります。

診察時には、次の内容を具体的に伝えましょう。

・渡航する国や地域
・出発日と帰国日
・旅行時の妊娠週数
・飛行時間
・乗り継ぎの回数
・現地で予定している活動
・都市部か医療機関の少ない地域か
・高地や離島へ行く予定があるか

主治医に確認したいのは、旅行の可否だけではありません。

・旅行中に使える薬
・体調不良時の対応
・受診が必要な症状
・予防接種の可否
・診療情報を英語で用意すべきか
・航空会社へ提出する診断書が必要か

なども相談しておきましょう。

妊娠週数と航空会社の搭乗条件を確認する

妊娠経過が順調な場合、時々の航空機利用は一般に可能とされています。ただし、妊娠後半になるほど陣痛や破水が始まる可能性が高くなるため、航空会社ごとに搭乗制限が設けられています。

多くの航空会社では妊娠後期まで搭乗できますが、国際線では国内線より早い時期から診断書を求められることがあります。単胎妊娠か多胎妊娠かによっても条件が異なります。

予約前に、利用する航空会社の公式サイトで次の点を確認しましょう。

・搭乗できる妊娠週数
・診断書が必要になる時期
・診断書の発行日や書式
・多胎妊娠の場合の制限
・乗り継ぎ便を含む各航空会社の条件
・復路便に乗る時点の妊娠週数

出発時には条件を満たしていても、帰国時には妊娠週数が進んで搭乗条件を満たさなくなることがあります。

妊娠中期は、初期のつわりが落ち着き、後期ほどお腹が大きくないため、旅行しやすいと感じる人が多い時期です。ただし、妊娠中期だから必ず安全という意味ではなく、妊娠経過に応じた個別の判断が必要です。

渡航先の感染症と予防接種を確認する

妊娠中は、渡航先で流行している感染症にも注意が必要です。

特に、ジカウイルス感染症やマラリアのリスクがある地域への渡航は慎重に判断します。妊娠中の感染が胎児に影響する可能性がある感染症もあるため、旅行先を変更したり、旅行そのものを延期したりする選択肢も検討しましょう。

黄熱など、入国時に予防接種証明書を求められる地域もあります。しかし、妊娠中は接種を避けるワクチンや、感染リスクと接種リスクを比較して判断するワクチンがあります。自己判断で接種せず、産婦人科や渡航外来へ早めに相談してください。

旅行先を決めるときは、次の点も確認しましょう。

・安全な飲み水を確保できるか
・生ものや加熱不足の料理を避けられるか
・蚊が多い地域ではないか
・高温多湿の環境ではないか
・標高の高い地域ではないか
・現地の産科医療が利用できるか

虫よけ剤、長袖、長ズボン、蚊帳、空調設備のある宿泊先なども、旅行先に応じて準備します。

長時間の移動では血栓と体調変化に注意する

妊娠中は、妊娠していない時期より血栓ができやすくなります。さらに、長時間同じ姿勢で座り続ける移動では、脚の静脈に血栓ができるリスクが高まる可能性があります。

飛行機や長距離バスでは、体調に問題がなければ次のことを意識しましょう。

・定期的に立って歩く
・座ったまま足首を動かす
・脚を組み続けない
・締めつけの少ない服を着る
・こまめに水分をとる
・通路側の席を選ぶ
・シートベルトはお腹の下で腰骨に沿わせる

弾性ストッキングが必要かどうかは、妊娠週数や血栓症の既往などによって異なります。自己判断で準備するのではなく、主治医へ相談すると安心です。

移動中は無理な乗り継ぎや短すぎる接続時間を避け、休憩時間に余裕を持たせましょう。旅行前から寝不足にならないよう、詰め込みすぎない日程にすることも大切です。

暑い地域では脱水や熱中症にも注意します。水分を持ち歩き、日中の長時間移動を避け、空調のある場所で休憩を取りましょう。

現地の病院と海外旅行保険を準備する

妊娠中の海外旅行では、通常の体調不良だけでなく、妊娠に関する診察や入院が必要になる可能性も考えておく必要があります。

海外旅行保険は、妊娠に関連する診療がすべて補償されるとは限りません。妊娠週数、既往症、通常の妊婦健診、早産、出産、新生児の治療、緊急搬送などが補償対象になるかを、契約前に確認しましょう。

保険会社へ確認したい項目は、次のとおりです。

・妊娠中の急な体調不良が補償されるか
・妊娠合併症が対象になるか
・入院や手術の補償上限
・早産や出産に関する扱い
・新生児の治療費
・医療通訳の有無
・キャッシュレス診療の可否
・日本への緊急搬送費

旅行保険には、持病や妊娠などの健康状態を正しく申告することが重要です。治療費だけでなく、予定変更や医療搬送に備えられる補償内容を確認しましょう。

出発前には、宿泊先近くで産科診療が可能な医療機関を調べておきます。

持ち歩きたい情報は、次のとおりです。

・母子健康手帳の必要部分のコピー
・妊娠週数と出産予定日
・血液型
・持病やアレルギー
・服用中の薬
・これまでの妊娠経過
・主治医の連絡先
・海外旅行保険の証券番号
・現地の救急番号
・日本大使館や総領事館の連絡先

スマートフォンだけでなく、紙にも控えておくと電池切れや通信障害の際に役立ちます。

出血・強い腹痛・胎動の変化は早めに受診する

海外旅行中に妊婦が体調を崩した場合、単なる旅行疲れや時差ぼけと決めつけないことが大切です。

次のような症状がある場合は、現地の医療機関へ早めに相談しましょう。

・性器出血がある
・破水した可能性がある
・規則的な腹痛や張りがある
・強い腹痛が続く
・胎動が明らかに少ない
・激しい頭痛がある
・見え方がおかしい
・顔や手足が急にむくむ
・胸が痛い
・息苦しい
・片脚だけが腫れたり痛んだりする
・高熱が続く
・嘔吐が続き水分をとれない
・転倒して腹部を打った

症状が強い、意識がおかしい、呼吸が苦しい、大量に出血している場合は、保険会社からの返答を待たず現地の救急番号へ連絡してください。

受診時には、妊娠週数、出産予定日、症状が始まった時間、出血量、胎動、持病、使用した薬を伝えます。

まとめ:妊娠中の海外旅行は事前準備と無理のない判断が大切

妊娠中の海外旅行は、妊娠週数だけで安全性を判断できません。

出発前に確認したいポイントは、次のとおりです。

・予約前に産婦人科へ相談する
・往路と復路の妊娠週数を確認する
・航空会社の搭乗条件を確認する
・感染症リスクの高い地域を避ける
・ワクチンや薬を自己判断で使わない
・長時間移動では定期的に体を動かす
・現地の産科医療機関を調べる
・妊娠関連の補償を保険会社へ確認する
・診療情報と緊急連絡先を携帯する
・出血や強い腹痛を旅行疲れと決めつけない

旅行が可能かどうかだけでなく、「現地で問題が起きたときに必要な診療を受けられるか」まで含めて考えることが大切です。

旅行中は予定を詰め込みすぎず、疲れたらすぐ休める日程にしましょう。少しでも体調に不安がある場合は、旅行の延期や行き先の変更も安全のための大切な選択です。

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るんるん
30代医師夫婦|旅行に役立つ情報発信|子どもは2人