旅行先で「薬を忘れた」と気づくと、とても焦りますよね。

普段飲んでいる薬がある人にとって、薬を飲めない状況は大きな不安につながります。高血圧、糖尿病、喘息、心臓病、てんかん、アレルギー、睡眠に関する薬など、毎日使っている薬は、体調を安定させるために大切なものです。

ただし、薬を忘れたときに自己判断で市販薬を買ったり、家族の薬を代わりに飲んだりするのは避けましょう。まずは、薬の名前や用量を確認し、必要に応じて医療機関や薬局に相談することが大切です。

この記事では、旅行先で薬を忘れたときの対応について解説します。

まずは薬の名前と飲み方を確認する

旅行先で薬を忘れたことに気づいたら、まず確認したいのは「何の薬を、どの量で、いつ飲んでいたか」です。

薬の名前が分からないまま医療機関や薬局に相談しても、同じ薬や代わりになる薬を判断しにくくなります。

確認に使えるものは、次のようなものです。

  • お薬手帳
  • 処方箋の控え
  • 電子お薬手帳アプリ
  • かかりつけ薬局のアプリ
  • マイナポータルの薬剤情報
  • 薬の写真
  • 家族に薬袋や薬の写真を送ってもらう

スマートフォンに薬の写真やお薬手帳の情報が残っているだけでも、かなり助けになります。

最近、電子処方せん対応の医療機関・薬局が増えていますが、本人の同意がある場合に限り、処方せん情報や実際に薬局で受け取った薬の情報を閲覧できます。

お薬手帳を忘れた場合の情報確認にも役立つことがあります。

飲み忘れてよい薬か、急いで必要な薬かを分けて考える

薬を忘れたときは、すぐに慌てて探し回る前に、薬の重要度を分けて考えましょう。

薬には、1回抜けても大きな問題になりにくいものもあれば、飲み忘れが体調悪化につながりやすいものもあります。

特に早めに相談すると良い薬には、次のようなものがあります。

  • 糖尿病の薬、インスリン
  • 血圧や心臓の薬
  • てんかんの薬
  • 喘息の吸入薬
  • 抗凝固薬、抗血小板薬
  • ステロイド薬
  • 免疫抑制薬
  • 抗アレルギー薬、アドレナリン自己注射薬
  • 精神科の薬、睡眠薬
  • 抗菌薬など服用期間が決まっている薬

これらの薬は、自己判断で中断すると体調に影響することがあります。

忘れたことに気づいた時点で、かかりつけ医、かかりつけ薬局、旅先の医療機関に相談しましょう。

かかりつけ医や薬局に連絡する

まず連絡しやすいのは、普段診てもらっている医療機関や薬を受け取っている薬局です。

電話で相談するときは、次の情報を伝えると話が進みやすくなります。

  • 旅行先の場所
  • 忘れた薬の名前
  • 何日分足りないか
  • 最後に飲んだ時間
  • 今の症状
  • 持病の内容
  • お薬手帳や薬剤情報があるか
  • 近くの医療機関や薬局に行けるか

かかりつけ医から直接、旅先の医療機関へ紹介状を送ってもらえるとは限りませんが、薬の名前や注意点を確認できるだけでも安心です。

薬局に相談すると、薬の一般名、規格、用法、注意点などを確認できることがあります。

旅先の医療機関を受診するときにも役立ちます。

国内旅行なら近くの医療機関を受診する

国内旅行中に処方薬を忘れた場合、原則として、医師の診察を受けて必要な薬を処方してもらう流れになります。

薬局では、処方薬を処方箋なしで受け取ることは通常できません。高血圧の薬や糖尿病の薬など、普段飲んでいる薬であっても、まずは医療機関で相談しましょう。

近くの医療機関を探すときは、厚生労働省の「医療情報ネット(ナビイ)」が利用できます。全国の病院、診療所、歯科診療所、助産所、薬局を検索でき、場所や診療科目などから探せます。

受診するときは、次のものを持参しましょう。

  • マイナ保険証または健康保険証
  • お薬手帳
  • 処方箋の控え
  • 本人確認書類
  • 医療証
  • 現在の症状をまとめたメモ

同じ薬がその場で必ず処方されるとは限りません。医師が状態を確認したうえで、必要な薬や代替薬を判断します。

海外旅行中は保険会社や現地医療機関に相談する

海外旅行中に薬を忘れた場合は、まず海外旅行保険のサポート窓口に連絡しましょう。

保険会社によっては、日本語で相談できる窓口や、提携医療機関の案内、キャッシュレス診療の案内をしてくれることがあります。

外務省は、海外の各国・地域の医療事情を「世界の医療事情」として公開しています。また、海外安全ホームページでは、国・地域別の医療・健康関連情報も確認できます。

海外で薬を購入する場合は、日本と同じ名前・同じ成分とは限りません。国によっては偽造薬や品質の問題もあります。厚生労働省検疫所FORTHも、現地で薬剤を購入する場合には、耐性やにせ薬のリスクに注意するよう紹介しています。

海外では、薬局で買える薬の範囲が日本と異なることがあります。自己判断で似た薬を選ばず、医師や薬剤師、保険会社のサポート窓口に相談しましょう。

市販薬で代用してよいかは慎重に判断する

旅行先で薬を忘れると、「とりあえず市販薬で代用しよう」と考えることがあります。

しかし、処方薬と市販薬は同じではありません。似たような症状に使う薬でも、成分、量、作用の強さ、飲み合わせが異なります。

特に、次のような場合は自己判断で代用しないようにしましょう。

  • 持病の薬を忘れた
  • 複数の薬を飲んでいる
  • 妊娠中、授乳中
  • 子どもや高齢者
  • 腎臓病、肝臓病、心臓病がある
  • 薬のアレルギーがある
  • 抗凝固薬や免疫抑制薬を使っている
  • 症状が強い、長引いている

市販薬を買う場合でも、薬剤師に「普段飲んでいる薬を忘れた」「持病がある」「今の症状はこうだ」と伝えましょう。

家族や友人の薬を飲まない

薬を忘れたときに、同行者が似た薬を持っていると「少しだけもらえばよいかも」と思うかもしれません。

しかし、家族や友人の薬を飲むのは避けましょう

同じように見える薬でも、成分や量が違うことがあります。体重、年齢、腎機能、肝機能、持病、他の薬との飲み合わせによって、適した薬は変わります。

特に、睡眠薬、痛み止め、抗菌薬、糖尿病の薬、血圧の薬、抗アレルギー薬などは、自己判断で共有しないことが大切です。

薬は「余っているから使える」ものではありません。

受診を急いだ方がよい症状

薬を忘れたことに加えて、体調に異変がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

特に、次のような症状がある場合は、急いで受診を考えてください。

  • 胸の痛み
  • 息苦しさ
  • 意識がぼんやりする
  • けいれん
  • 強い頭痛
  • 麻痺やろれつが回らない
  • 強い腹痛
  • 嘔吐が続く
  • 高熱
  • 強いアレルギー症状
  • 血糖値が大きく乱れている
  • 血圧が非常に高い、または低い
  • 喘息発作
  • 出血が止まりにくい

旅行中は「せっかく来たから」と我慢しがちですが、危ない症状を我慢しても旅の思い出は増えません。増えるのは不安だけです。

薬を忘れたときに旅先で伝える内容

医療機関や薬局で相談するときは、次の情報を伝えましょう。

  • 忘れた薬の名前
  • いつから飲めていないか
  • 普段の飲み方
  • 持病の名前
  • 今の症状
  • アレルギーの有無
  • 妊娠・授乳の有無
  • 他に飲んでいる薬
  • 旅行日程
  • いつ自宅に戻る予定か

薬の名前が分からない場合は、お薬手帳の写真、薬袋の写真、かかりつけ薬局の情報、マイナポータルの薬剤情報などを見せましょう。

海外では、薬の「商品名」よりも「一般名」が役立つことがあります。

日本での商品名がそのまま通じるとは限らないためです。

次回の旅行で薬を忘れないための工夫

薬を忘れた経験がある人は、次回から忘れにくい仕組みを作っておきましょう。

おすすめの工夫は、次の通りです。

  • 旅行前チェックリストに薬を入れる
  • お薬手帳をスマホで撮影しておく
  • 薬袋や薬の写真を保存しておく
  • 常用薬は出発前日にバッグへ入れる
  • 手荷物とスーツケースに分ける
  • 数日分多めに準備する
  • 旅行用の薬ポーチを作る
  • スマホのリマインダーを使う
  • 家族にも薬の場所を共有する
  • 海外旅行では英文メモを用意する

薬を忘れないためには、「出発直前に入れる」よりも「旅行用ポーチを決めておく」方が失敗しにくくなります。


まとめ

旅行先で薬を忘れたときは、まず薬の名前、量、飲み方を確認しましょう。お薬手帳、薬剤情報提供書、電子お薬手帳、薬の写真、かかりつけ薬局の情報が役立ちます。

国内旅行では、近くの医療機関を受診して相談するのが基本です。厚生労働省の医療情報ネットを使うと、旅先の医療機関や薬局を探しやすくなります。

海外旅行では、海外旅行保険のサポート窓口や現地医療機関に相談しましょう。現地で薬を買う場合は、日本と同じ薬とは限らず、偽造薬や品質の問題にも注意が必要です。

家族や友人の薬を飲んだり、市販薬で安易に代用したりせず、薬の情報を確認したうえで医師や薬剤師に相談することが大切です。

薬を忘れると焦りますが、落ち着いて情報を集めれば対応しやすくなります。次の旅行に向けて、薬用ポーチやお薬手帳の写真など、忘れにくい仕組みも作っておきましょう。

参考文献

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