旅行前に、普段飲んでいる薬をどう持っていけばよいのか迷うことがあります。

高血圧、糖尿病、喘息、心臓病、アレルギー、てんかん、睡眠に関する薬など、処方薬を使っている人にとって、旅行中に薬が足りなくなることは大きな不安につながります。

国内旅行であれば、薬局や医療機関を探せることもありますが、旅先ですぐに同じ薬を処方してもらえるとは限りません。海外旅行では、言葉の違い、医療制度の違い、薬の持ち込みルールなども関係します。

この記事では、処方薬を旅行に持っていくときに確認したいポイントについて解説します。

処方薬は旅行日数より少し多めに持っていく

処方薬は、旅行日数ぴったりではなく、少し余裕を持って準備しておきましょう。

旅行では、天候不良、交通機関の遅れ、体調不良、予定変更などで、帰宅が遅れることがあります。薬が足りなくなると、旅先で医療機関を探したり、薬の情報を説明したりする必要が出てきます。

特に、毎日飲む薬、急に中止すると体調に影響しやすい薬、発作や症状の悪化を防ぐ薬は、数日分多めに準備しておくと安心です。

ただし、海外旅行では持ち込める薬の量に制限がある国もあります。長期滞在や大量の薬を持参する場合は、渡航先のルールを確認しておきましょう。

渡航先によっては医師の診断書が必要になったり、持ち込める数量に制限があったり、事前許可が必要になる場合があります。

薬は手荷物にも分けて入れる

処方薬は、スーツケースだけに入れず、手荷物にも分けて持っておきましょう。

飛行機を利用する場合、預け荷物が遅れたり、紛失したりする可能性があります。必要な薬をすべて預け荷物に入れてしまうと、到着後すぐに薬を飲めなくなることがあります。

移動中に飲む薬、発作時に使う薬、アレルギー症状に備える薬、インスリンや吸入薬などは、すぐ取り出せる場所に入れておくと安心です。

薬は元の包装や薬袋のまま持参する

処方薬は、できるだけ元の包装や薬袋のまま持参しましょう。

ピルケースに入れると便利ですが、薬の名前や用量が分からなくなることがあります。旅先で医療機関を受診したときや、空港で確認を受けたときに、何の薬なのか説明しにくくなることがあります。

厚生労働省は、海外に医薬品を持参する場合、PTP包装入りの錠剤やカプセルはそのまま、瓶入りの薬は病院や薬局で交付された瓶のまま持参するよう案内しています。他の容器へ移し替えると、薬の確認が難しくなり、渡航先によっては持ち込めないことがあるためです。

一包化されている薬や粉薬を持っていく場合は、旅行前に医師や薬剤師へ相談しておくと安心です。厚生労働省は、粉薬について、海外では違法薬物の疑いをかけられるおそれがあるため、必要に応じて他の剤形に変更できないか相談することも案内しています。

お薬手帳や薬剤情報を持っていく

処方薬を持って旅行するときは、薬そのものだけでなく、薬の情報も一緒に持っていきましょう。

持っていきたいものは、次のようなものです。

  • お薬手帳
  • 薬剤情報提供書
  • 処方箋のコピー
  • 病名や薬の名前を書いたメモ
  • アレルギー歴のメモ
  • かかりつけ医療機関の連絡先

国内旅行でも、旅先で医療機関を受診することがあります。そのときに、普段飲んでいる薬が分かると、診察や処方の参考になります。

海外旅行では、日本語の薬の名前だけでは伝わりにくいことがあります。必要に応じて、薬の一般名、病名、服用方法を英語で書いたメモを準備しておくと安心です。

海外旅行では薬の持ち込みルールを確認する

海外旅行で処方薬を持参する場合は、渡航先の薬の持ち込みルールを確認しておきましょう。

日本で通常どおり処方されている薬でも、海外では規制対象になる場合があります。薬の種類、量、成分によっては、診断書、薬剤証明書、事前申請、許可証などが必要になることがあります。

特に注意したい薬には、次のようなものがあります。

  • 医療用麻薬
  • 向精神薬
  • 睡眠薬
  • ADHD治療薬など一部の薬
  • 強い痛み止め
  • 注射薬
  • 大量の医薬品

医療用麻薬や覚醒剤原料に該当する医薬品を自己の治療目的で日本から持ち出す、または日本へ持ち込む場合は、事前に地方厚生局長の許可が必要になる場合があります。向精神薬についても、書類の携帯が必要になることがあります。

渡航先ごとのルールは国によって異なります。厚生労働省、渡航先の大使館、外務省海外安全ホームページなどで、早めに確認しておきましょう。外務省海外安全ホームページでも、医薬品の持ち込み・持ち出しについて、厚生労働省の手続き情報を確認するよう案内されています。

英文の診断書や薬剤証明書が必要になることがある

海外旅行では、処方薬の内容を説明できる文書を用意しておくと安心です。

特に、持病の薬を複数持っていく場合、注射薬を持参する場合、睡眠薬や向精神薬を持っていく場合、長期滞在で薬の量が多い場合は、英文の診断書や薬剤証明書を準備した方がよいことがあります。

文書には、次のような情報が含まれると説明しやすくなります。

  • 病名
  • 薬の名前
  • 薬の一般名
  • 用量
  • 服用回数
  • 治療目的
  • 医師名、医療機関名

診断書や証明書は、すぐに発行できないこともあります。旅行直前ではなく、余裕を持って主治医に相談しておきましょう。薬の準備は、出発前夜に気合いで解決しにくい分野です。

時差がある旅行では薬を飲む時間に注意する

海外旅行では、時差の影響で薬を飲む時間に迷うことがあります。

1日1回の薬、1日2回の薬、食後に飲む薬、決まった時間に飲む薬など、薬によって飲み方は異なります。自己判断でまとめて飲んだり、急に間隔を空けたりしないようにしましょう。

海外旅行中は時差の影響で薬をいつ飲むか迷うことがあり、1日食後3回服用する薬であれば8時間ごとを目安にするとよいでしょう。また、糖尿病や血圧の薬を服用している人は旅行前に医師や薬剤師へ相談するようにしましょう。

特に、糖尿病の薬、インスリン、血圧の薬、てんかんの薬、心臓の薬などは、飲むタイミングが重要です。時差のある旅行では、出発前に「日本時間で飲むのか」「現地時間に合わせるのか」を確認しておきましょう。

注射薬や冷所保存の薬は保管方法を確認する

インスリン、GLP-1受容体作動薬、生物学的製剤、自己注射薬などを使っている人は、旅行前に保管方法を確認しておきましょう。

薬によっては、冷所保存が必要なものがあります。一方で、凍結してはいけない薬もあります。保冷剤を使う場合でも、薬に直接当てると冷えすぎることがあります。

飛行機を利用する場合は、注射器や針、液体薬を機内に持ち込む際の扱いについて、航空会社や空港の案内も確認しておくと安心です。必要に応じて、主治医に診断書や薬剤証明書を相談しましょう。

アドレナリン自己注射薬を処方されている人は、旅行中もすぐ使える場所に持ち、同行者にも保管場所や使う場面を共有しておくと安心です。

子どもの処方薬は年齢・体重・飲ませ方を確認する

子どもが処方薬を使っている場合は、旅行前に薬の量と飲ませ方を確認しておきましょう。

子どもの薬は、年齢や体重によって量が変わることがあります。また、粉薬、シロップ、坐薬など、持ち運びや保管に注意が必要な薬もあります。

旅行先で飲ませるタイミング、食事が取れないときの対応、吐いてしまったときに再度飲ませるべきかなどは、薬によって異なります。迷いやすい薬がある場合は、出発前に医師や薬剤師へ確認しておきましょう。

また、子どもの薬は大人の薬で代用しないようにしましょう。薬によっては、子どもに使えない成分や年齢制限があります。

旅先で薬をなくしたときの備えをしておく

旅行中に薬をなくしたり、足りなくなったりする可能性もあります。

そのような場合に備えて、薬の名前や量が分かる情報を持っておくことが大切です。お薬手帳や薬剤情報提供書があれば、旅先の医療機関や薬局で説明しやすくなります。

国内旅行であれば、医療機関を受診して相談することができます。ただし、同じ薬をすぐに処方してもらえるとは限らないため、普段の薬の情報を正確に伝えられるようにしておきましょう。

海外旅行では、現地で薬を購入する場合に、成分や品質が日本と異なることがあります。現地で薬剤を購入する場合には耐性や偽造薬のリスクにも注意するようにしましょう。

処方薬を旅行に持っていく前のチェックリスト

出発前には、次の項目を確認しておきましょう。

  • 旅行日数より少し多めに薬を準備した
  • 薬を手荷物とスーツケースに分けた
  • 薬を元の包装や薬袋のまま持参する
  • お薬手帳を持った
  • 薬剤情報提供書や処方箋のコピーを用意した
  • 薬の飲み方を確認した
  • 時差がある場合の服用タイミングを確認した
  • 冷所保存が必要な薬の保管方法を確認した
  • 注射薬や針の持ち込み方法を確認した
  • 海外旅行では渡航先の持ち込みルールを確認した
  • 必要に応じて英文診断書や薬剤証明書を準備した
  • 緊急時に受診できる医療機関や保険の連絡先を確認した

まとめ

処方薬を旅行に持っていくときは、薬の量、持ち運び方、飲むタイミング、保管方法を事前に確認しておくことが大切です。

薬は旅行日数より少し多めに準備し、スーツケースだけでなく手荷物にも分けて持っておくと安心です。お薬手帳や薬剤情報提供書も一緒に持参すると、旅先で医療機関を受診するときに役立ちます。

海外旅行では、薬の持ち込みルールが国によって異なります。薬の種類によっては、診断書、証明書、事前申請、許可証が必要になることがあります。

処方薬は、普段の体調を支える大切なものです。旅行を安心して楽しむためにも、出発前に主治医や薬剤師へ相談し、自分に合った形で準備しておきましょう。

参考文献

ABOUT ME
るんるん
30代医師夫婦|旅行に役立つ情報発信|子どもは2人