高齢者との旅行では、観光中の疲れや食事時間の変化によって、いつもの薬を飲み忘れることがあります。薬の種類が多い場合は、「朝の薬を飲んだか分からない」「持ってきた薬が足りない」と混乱することもあるでしょう。

高血圧や糖尿病、心臓病などの治療薬は、旅行中も処方された方法で続けることが基本です。一方、飲み忘れたときの対応や保管方法は薬によって異なるため、旅行前の準備が重要です。

この記事では、高齢者との旅行で気をつけたい薬の管理について解説します。

出発前に薬の種類と残りの日数を確認する

旅行の日程が決まったら、まず普段使用している薬と残量を確認しましょう。飲み薬だけでなく、目薬、吸入薬、貼り薬、インスリン注射、頓服薬なども忘れずに確認します。

薬は旅行日数分だけでなく、交通機関の欠航や体調不良による滞在延長も考え、主治医や薬剤師へ相談したうえで少し余裕を持って準備すると安心です。ただし、海外旅行では国によって医薬品の持ち込み量に上限が設けられている場合があります。必要以上に大量の薬を持参せず、渡航先の規定を事前に確認してください。

旅行前には、次の点も確認しておきましょう。

・薬の名前と服用する時間
・1回に使用する量
・食前、食後、就寝前などの条件
・飲み忘れた場合の対応
・副作用が出たときの相談先
・薬が不足した場合の連絡先
・旅行中に使用する頓服薬

複数の医療機関から薬を処方されている場合は、旅行を機に薬の重複や飲み合わせを薬剤師へ確認してもらうのもよいでしょう。

1回分ずつ整理し、服用したことが分かるようにする

旅行中は、普段と食事や就寝の時間が変わりやすく、薬を飲んだかどうか分からなくなることがあります。薬の包装をまとめて袋に入れるだけでは、飲み忘れや重複服用につながる可能性があります。

朝・昼・夕・就寝前に分けられる薬ケースや、日付ごとの小袋を利用すると管理しやすくなります。「1日目の朝」「1日目の夕」などと分け、服用後に空の袋を残しておけば、飲んだかどうかを確認できます。

スマートフォンのアラームや服薬管理アプリを利用する方法もあります。ただし、本人が機器の操作に慣れていない場合は、同行者も服用時間を把握しておきましょう。

家族が薬を渡す場合も、本人の薬であることと服用時間を確認してから渡します。夫婦で同じような薬を使用していても、処方薬を共有したり、取り違えたりしてはいけません。医療用医薬品は、その人の症状や体質、年齢などを考慮して処方されています。

飲み忘れても2回分をまとめて飲まない

薬を飲み忘れたときに、自己判断で次の服用時に2回分をまとめて飲むのは危険です。薬が効きすぎたり、副作用が起こりやすくなったりする可能性があります。

一般的には、飲み忘れに気づいた時点で服用できる場合もありますが、次の服用時間が近い場合は忘れた分を飛ばすことがあります。ただし、薬によって対応は異なります。政府広報でも、2回分をまとめて飲まず、薬ごとの対応をあらかじめ医師や薬剤師に確認するよう案内しています。

特に、次のような薬は自己判断せず、医師や薬剤師へ相談してください。

・糖尿病の薬やインスリン
・血液を固まりにくくする薬
・不整脈や心臓病の薬
・抗てんかん薬
・ステロイド薬
・パーキンソン病の薬
・睡眠薬や向精神薬

飲み忘れた時刻、最後に薬を飲んだ時刻、薬の名前を確認したうえで、処方を受けた医療機関や薬局へ連絡しましょう。薬に関する飲み方や副作用の相談窓口として、PMDAなども案内されています。

薬は手荷物に入れ、高温や紛失を防ぐ

旅行に必要な薬は、できるだけ本人や同行者が持つ手荷物に入れましょう。飛行機や長距離バスでは、預けた荷物の到着が遅れたり、荷物をすぐに取り出せなかったりすることがあります。

薬をすべて一つのバッグにまとめると、紛失した際に服用できなくなるため、予備の薬を同行者の手荷物に分ける方法もあります。ただし、どこに何日分を入れたか分かるように記録しておきましょう。旅行中の紛失などに備え、薬を分散して持つことも対策の一つです。

薬は、直射日光が当たる場所や高温になる車内へ放置しないでください。特に夏場の駐車中の車内は高温になるため、短時間でも薬を置いたままにしないようにします。

インスリンや一部の注射薬、坐薬など、温度管理が必要な薬もあります。保冷剤を使用する場合でも、薬を直接密着させると凍結するおそれがあります。薬ごとに保管条件が異なるため、旅行前に添付文書を確認するか、薬剤師に保冷方法を相談してください。医療用医薬品の保管方法は、PMDAの添付文書情報からも確認できます。

お薬手帳と薬の情報をすぐ出せるようにする

旅先で体調を崩した場合、普段使っている薬の名前や量が分からないと、診療に時間がかかることがあります。お薬手帳はスーツケースの奥ではなく、診察券や保険資格を確認できるものと一緒に携帯しましょう。

お薬手帳には、薬の重複や飲み合わせ、副作用を確認するための情報が記録されています。旅行中に医療機関や薬局を利用するときにも役立ちます。

電子版お薬手帳を利用すると、スマートフォンで服薬歴を確認し、医師や薬剤師と共有できます。ただし、充電切れや端末の故障に備え、薬の一覧を紙に印刷したり、家族のスマートフォンにも写真を保存したりすると安心です。

携帯しておきたい情報は、次のとおりです。

・お薬手帳
・薬の一覧と服用量
・持病とアレルギーの情報
・かかりつけ医と薬局の連絡先
・マイナ保険証または資格確認書
・緊急連絡先
・ペースメーカーなど医療機器の情報

救急車を呼んだ場合も、普段飲んでいる薬やお薬手帳を準備することが推奨されています。

まとめ:家族で薬の予定を共有してから出発する

高齢者との旅行では、本人だけに薬の管理を任せず、同行する家族も薬の種類や服用時間を把握しておくことが大切です。

旅行前には、次の準備をしておきましょう。

・旅行日数と薬の残量を確認する
・服用時間ごとに薬を整理する
・アラームなどで飲み忘れを防ぐ
・飲み忘れた場合の対応を確認する
・薬を手荷物に入れて分散して持つ
・高温や凍結を避けて保管する
・お薬手帳と薬の一覧を携帯する
・市販薬を購入する前に薬剤師へ相談する

飲み忘れに気づいても、2回分をまとめて服用してはいけません。薬によって適切な対応が異なるため、分からない場合は処方した医師や薬剤師へ相談してください。

旅行中も普段と同じ治療を続けられるよう、出発前に薬を整理し、同行者と服用予定を共有しておきましょう。

参考文献

『海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しについて』(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index_00005.html

『健康・医療 電子版お薬手帳』(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/e-okusuritecho.html

『知っておきたい 薬のリスクと、正しい使い方』(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/article/201310/entry-8822.html

『薬の副作用かな?と思ったら すぐに医師にご相談を!』(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/article/201911/entry-8498.html

『医療用医薬品 添付文書等情報検索』(医薬品医療機器総合機構)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

『もしものときの救急車の利用法』(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/article/201609/entry-7888.html

ABOUT ME
るんるん
30代医師夫婦|旅行に役立つ情報発信|子どもは2人