妊娠中に旅行してよいか迷う|妊娠中の旅行で気をつけたいこと
妊娠中でも、体調がよければ旅行を楽しみたいと考える人は少なくありません。一方で、「移動が赤ちゃんに影響しないか」「旅先で出血したらどうすればよいか」と不安になることもあるでしょう。
妊娠経過に問題がない場合、旅行そのものが必ず禁止されるわけではありません。しかし、妊娠中は突然の出血や腹痛、破水、体調不良などが起こる可能性があり、普段とは異なる環境では迅速に受診できないこともあります。特に妊娠後期や合併症がある場合は、旅行を控えた方がよいことがあります。
この記事では、妊娠中に旅行するときの注意点や、旅行を中止して受診すべき症状について解説します。
旅行を決める前に妊娠週数と経過を確認する

妊娠中の旅行を考えるときは、妊娠週数だけでなく、これまでの妊娠経過や現在の体調を確認することが大切です。
妊娠初期は、つわり、眠気、だるさなどが強く、長時間の移動が負担になりやすい時期です。妊娠後期になると、おなかが大きくなって動きにくくなるほか、陣痛や破水が始まる可能性も高まります。
一般的には、つわりが落ち着き、おなかもまだ大きくなりすぎていない妊娠中期は比較的移動しやすいとされています。ただし、いわゆる安定期であっても、妊娠中のトラブルが起こらないとは限りません。週数だけを基準に「もう安全」と判断しないようにしましょう。
次のような状況がある場合は、旅行を予約する前に必ず産婦人科で相談してください。
・妊娠中の出血がある
・下腹部痛や頻繁なおなかの張りがある
・前置胎盤や切迫早産を指摘されている
・妊娠高血圧症候群などの合併症がある
・多胎妊娠である
・過去に早産を経験している
・医師から安静や活動制限を指示されている
・出産予定日が近い
旅行前の健診では、行き先、移動時間、交通手段、宿泊日数を具体的に伝え、旅行してよい状態か確認しておきましょう。
予定を詰め込まず、すぐ休める旅程にする

妊娠中の旅行では、通常の旅行よりも余裕のある計画が必要です。朝から夜まで観光地を回ったり、長時間歩き続けたりする予定は避けましょう。
旅行先では思った以上に歩くことがあります。駅や空港での乗り換え、ホテル内の移動、観光施設での待ち時間なども体への負担になります。観光は1日1~2か所程度に絞り、途中で横になれる時間を確保すると安心です。
次のような条件の行き先は、慎重に検討しましょう。
・近くに産婦人科や救急病院がない
・離島や山間部など移動に時間がかかる
・階段や坂道が多い
・暑さや寒さが厳しい
・標高が高い
・長時間の徒歩移動が必要
・予定を変更しにくいツアー旅行
妊娠中の体調は当日になって変わることがあります。キャンセル料よりも母体と胎児の安全を優先し、出発当日に体調が悪ければ旅行を中止できる計画にしておきましょう。
車・電車・飛行機では同じ姿勢を続けない

車や電車、飛行機で長時間同じ姿勢を続けると、足のむくみや腰痛が起こりやすくなります。妊娠中は血栓ができる危険性も高くなるため、長時間移動ではこまめに体を動かすことが重要です。
車で移動するときは、1時間程度を目安に休憩し、トイレに行ったり、無理のない範囲で歩いたりしましょう。自分で運転する場合は、体調が急変する可能性も考え、長距離運転を避けることが望まれます。
電車や飛行機では、トイレに立ちやすい通路側の席を選びます。座ったまま足首を動かしたり、可能であれば定期的に通路を歩いたりしましょう。水分を控えると脱水につながるため、トイレを心配して飲水を我慢しないことも大切です。
シートベルトは、腰ベルトをおなかの膨らみの下に通し、骨盤を押さえる位置で着用します。肩ベルトは胸の間を通し、おなかの横へ沿わせてください。飛行機では予測できない揺れに備え、座っている間はできるだけシートベルトを着用しておきましょう。
飛行機は航空会社の搭乗条件も確認する

合併症のない妊娠であれば、時折飛行機を利用することは一般に可能とされています。ただし、出産予定日が近づくと、航空会社によって診断書の提出や医師の同伴を求められる場合があります。
たとえばANAでは、国内線・国際線ともに出産予定日を含め28日以内の搭乗では、所定の診断書が必要です。さらに出産予定日を含め7日以内になると、医師または助産師の同伴が必要となります。規定は航空会社や国内線・国際線によって異なるため、予約時と搭乗前に最新情報を確認してください。
飛行機を利用する場合は、次のような準備をしておきます。
・通路側の席を選ぶ
・締めつけの少ない服装にする
・こまめに水分を取る
・足首を動かし、可能な範囲で歩く
・母子健康手帳や保険証類を機内持ち込みにする
・利用する航空会社の妊婦向け搭乗条件を確認する
海外旅行では、感染症、医療体制、言語、保険の補償範囲など、国内旅行以上に確認事項が増えます。妊娠に関連した診療や早産、新生児治療が海外旅行保険の対象外となる場合もあるため、補償内容を細かく確認しましょう。
母子健康手帳と受診に必要な情報を持参する

旅行中に体調を崩した場合に備え、現地で受診できる産婦人科や救急病院を事前に調べておきましょう。宿泊先から病院までの距離や移動方法、夜間・休日の受診先も確認しておくと安心です。
旅行時には、次のものをすぐ取り出せる場所に入れておきます。
・母子健康手帳
・マイナ保険証または資格確認書
・診察券
・お薬手帳
・現在使用している薬
・かかりつけ産婦人科の連絡先
・出産予定日や妊娠週数が分かるもの
・緊急連絡先
・生理用ナプキン
・飲み物と軽食
母子健康手帳には、妊娠経過や検査結果など、旅先での診療に役立つ情報が記載されています。旅行中はスーツケースに預けず、常に携帯しましょう。
常用薬がある場合は、自己判断で中止したり、旅行先の市販薬を安易に使用したりしないでください。酔い止めや鎮痛薬、便秘薬なども、妊娠中に使用できるか事前に主治医や薬剤師へ確認しておきます。
出血・腹痛・破水感があれば予定を中止する

旅行中に少しでも異変を感じた場合は、観光を続けず、まず安全な場所で休みます。
次のような症状がある場合は、旅行先の産婦人科や救急医療機関へ連絡してください。
・性器出血がある
・規則的または強いおなかの張りがある
・強い下腹部痛が続く
・水のようなものが流れ、破水が疑われる
・胎動がいつもより明らかに少ない
・激しい頭痛や目のちらつきがある
・顔や手が急にむくんだ
・息苦しさや胸の痛みがある
・片方の脚だけが腫れたり痛んだりする
・発熱や繰り返す嘔吐がある
・転倒しておなかを打った
大量の出血、強い腹痛、意識の異常、呼吸困難などがある場合は、ためらわず119番へ連絡します。自家用車やタクシーで長距離を移動し、かかりつけの病院まで戻ろうとするのは避けましょう。
まとめ:旅行できるかは週数だけで判断しない

妊娠中の旅行は、妊娠経過に問題がなく、体調が安定していれば検討できる場合があります。ただし、安定期だから必ず安全というわけではありません。
旅行前には産婦人科へ相談し、次の点を確認しておきましょう。
・現在の妊娠経過で旅行してよいか
・移動時間や交通手段に無理がないか
・旅先ですぐ受診できるか
・航空会社の搭乗条件を満たしているか
・出血や腹痛が起きたときの対応が決まっているか
・当日の体調次第で中止できるか
旅行中は予定どおりに観光することよりも、妊婦本人が無理なく過ごし、安全に帰宅することを優先してください。体調に不安があるときは延期や中止も含めて検討し、主治医の指示に従いましょう。
参考文献
『妊娠中のお客様(国内線)』(全日本空輸株式会社)
https://www.ana.co.jp/ja/jp/guide/reservation/support/domestic/maternity/
『妊娠中のお客様(国際線)』(全日本空輸株式会社)
https://www.ana.co.jp/ja/jp/guide/reservation/support/international/maternity/