旅行中に骨折が疑われるときの対応
旅行中に転倒したり、階段を踏み外したりした後、強い痛みや腫れが出ると、「骨折しているのではないか」「自分で病院へ行ってよいのか」と迷うことがあります。
骨折では、痛みや腫れ、皮下出血、動かしにくさ、変形などがみられます。ただし、強い打撲や捻挫、脱臼でも似た症状が出るため、見た目だけで骨折の有無を判断することはできません。ヒビや骨の一部が欠けた状態も骨折に含まれ、確定には医療機関での診察や画像検査が必要です。
この記事では、旅行中に骨折が疑われるときの対応について解説します。
痛み・腫れ・変形があれば無理に動かさない

転倒や衝突の後に強い痛みがある場合は、まず負傷した部分を動かさず、楽な姿勢で休ませます。
骨折を疑う主なサインは、次のとおりです。
・強い痛みが続く
・急に腫れてきた
・青紫色の内出血がある
・手足を動かせない
・立ったり歩いたりできない
・触れると特定の場所を強く痛がる
・左右で形が違う
・関節や手足が不自然な方向を向いている
・ケガをしたときに音や感触があった
症状が軽く見えても、ヒビやずれの少ない骨折である可能性があります。痛みを我慢して歩いたり、動くかどうかを何度も試したりすると、骨折部のずれや周囲の組織の損傷が悪化するおそれがあります。
靴や指輪、腕時計などは、腫れが強くなる前に無理なく外せる場合に限って外しておきます。ただし、外すために患部を大きく動かす必要がある場合は、そのまま救急隊や医療機関に任せましょう。
曲がった手足を自分で元に戻さない

骨折が疑われる手足が曲がっていたり、変形していたりしても、自分で引っ張ったり、まっすぐに戻したりしてはいけません。
骨折した部分を無理に動かすと、骨の端が血管や神経、筋肉などを傷つける可能性があります。変形がある場合も、そのままの位置で動かないように支えることが基本です。
手足を支えるときは、次のような物を利用できます。
・丸めたタオル
・衣類
・クッション
・段ボール
・雑誌
・傘
・板状の物
・三角巾やスカーフ
固定する場合は、痛む場所だけでなく、その上下の関節が大きく動かないように支えます。ただし、応急処置に慣れていない場合は、無理に副木を当てるよりも、タオルや衣類で患部の周囲を支え、動かさずに救助を待つ方が安全なこともあります。
固定した後に、指先や足先が白い、青紫色になる、冷たい、しびれる、感覚がなくなる場合は、血流や神経に問題が生じている可能性があります。締めつけすぎず、救急隊や医療機関へ速やかにつなげましょう。
傷や出血がある骨折は早急に救急要請する

骨折した部分の皮膚が破れ、傷と骨折部がつながっている状態を開放骨折といいます。骨が見えていなくても、骨折が疑われる場所に深い傷や出血がある場合は、開放骨折の可能性があります。
開放骨折は感染などの危険があり、治療を急ぐ必要があります。傷口から骨が見えていても、押し戻したり、傷の中を洗ったりしないでください。
次のような場合は、119番への連絡を考えます。
・骨が見えている
・深い傷や大量の出血がある
・手足が明らかに変形している
・手足の先が冷たい、白い、紫色になっている
・しびれや感覚の低下がある
・交通事故や高所からの転落によるケガ
・首や背中、骨盤の骨折が疑われる
・強い痛みで動けない
・意識や呼吸の状態がおかしい
出血している場合は、骨が飛び出している部分を直接強く押さえず、清潔なガーゼや布で傷の周囲を覆います。出血量が多い場合は、119番の通信指令員の指示に従って応急手当を行いましょう。
首・背中・股関節を痛がるときは歩かせない

頭を打った、高い場所から落ちた、交通事故に遭った場合は、手足だけでなく首や背骨を損傷している可能性があります。
首や背中の強い痛み、手足のしびれ、力が入らない、感覚がおかしいといった症状がある場合は、本人を起こしたり歩かせたりせず、できるだけその場で安静にします。脊髄損傷が疑われる場合は、頭と体を不用意に動かさないことが重要です。
また、高齢者が転倒後に股関節や脚の付け根を痛がり、立てない、歩けない場合は、大腿骨近位部などの骨折も考えられます。無理に立たせたり、車まで歩かせたりしないようにしましょう。
首、背中、骨盤、股関節の骨折が疑われる場合は、自家用車やタクシーで無理に運ばず、救急車の利用を検討します。本人が動けそうに見えても、移動によって痛みや損傷が悪化する可能性があります。
受診先へ電話し、移動方法を確認する

明らかな変形や大量出血がなく、意識や呼吸が安定している場合でも、骨折が疑われるときは早めに医療機関を受診しましょう。
受診先は、整形外科のある病院や救急外来が基本です。診断にはX線検査などが必要になるため、整骨院や整体だけで骨折の有無を確定することはできません。
医療機関へ向かう前に電話し、次の内容を伝えます。
・患者の年齢
・ケガをした時刻
・転倒や衝突の状況
・痛む場所
・腫れや変形の有無
・傷や出血の有無
・自力で歩けるか
・しびれや感覚の異常がないか
・頭や首を打っていないか
病院までの移動では、患部をできるだけ動かさないようにします。脚の骨折が疑われる人を歩かせたり、痛む腕で荷物を持たせたりしないでください。
旅行先で受診するときは、マイナ保険証または資格確認書、お薬手帳、服用中の薬、持病やアレルギーが分かる情報も持参しましょう。診療明細書や領収書は、旅行保険や医療費助成の手続きで必要になることがあるため保管します。
まとめ:骨折が疑われたら「動かさない・戻さない・早めに受診」

旅行中に骨折が疑われたときは、骨折かどうかを自分で確かめようとして、患部を何度も動かさないことが大切です。
基本的な対応は、次のとおりです。
・患部を動かさず安静にする
・曲がった手足を元に戻さない
・タオルや衣類などで楽な位置に支える
・指輪や靴は無理なく外せる場合に外す
・傷や骨が見えていても押し戻さない
・首や背中を痛がる場合は起こさない
・脚や股関節を痛がる人を歩かせない
・変形や大量出血があれば119番へ連絡する
・軽く見えても早めに整形外科を受診する
痛みや腫れが強い、変形している、手足の先が冷たい、しびれる、傷から骨が見える場合は、緊急性が高い可能性があります。
「旅行中だから帰宅してから受診しよう」と無理に移動せず、旅先の医療機関や救急窓口へ相談してください。
参考文献
『骨折』(日本赤十字社)
https://www.jrc.or.jp/study/safety/fracture/
『「骨折」|症状・病気をしらべる』(日本整形外科学会)
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/bone_fracture.html
『もしものときの救急車の利用法』(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/article/201609/entry-7888.html
『副子固定法(下腿)』(総務省消防庁)
https://www.fdma.go.jp/relocation/kyukyukikaku/oukyu/05kobetsu/02/05_02_22.html
『脊髄損傷』(日本整形外科学会)
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spinal_cord_injury.html
『整形外科と接骨院(いわゆる整骨院)』(日本整形外科学会)
https://www.joa.or.jp/public/about/bonesetter.html