飛行機に乗っているときに、「急に気分が悪くなったらどうしよう」「狭い機内で吐き気や腹痛が出たら不安」「持病があるけれど、機内で体調を崩さないか心配」と感じることがあります。

飛行機内では、すぐに病院を受診できません。気圧や湿度の変化、長時間同じ姿勢でいること、睡眠不足、緊張、脱水などが重なり、普段より体調の変化を感じやすくなることがあります。

機内で体調が悪くなったときは、我慢しすぎず、早めに客室乗務員へ伝えることが大切です。航空機には救急対応の体制があり、客室乗務員は基本的な応急対応の訓練を受けています。医療者が搭乗している場合は協力を依頼することもあります。

ここでは、飛行機内で体調が悪くなったときの対応について解説します。

飛行機内で体調が悪くなることはある?

飛行機内での体調不良は、珍しいものではありません。多くは軽い吐き気、めまい、頭痛、腹痛、気分不快などですが、まれに緊急対応が必要になることもあります。ここでは、飛行機内で体調が悪くなることについて解説します。

機内では普段と違う環境になる

飛行機内は、地上とは環境が異なります。

気圧、湿度、座席の狭さ、長時間の同じ姿勢、時差、睡眠不足、緊張、食事や水分摂取の変化などが重なると、体調を崩しやすくなることがあります。

特に長時間フライトでは、喉や目の乾燥、足のむくみ、胃腸の不調、頭痛、だるさなどを感じる方もいます。持病がある方では、普段は安定していても、移動の負担で症状が出やすくなることがあります。

よくある機内の体調不良

機内で起こりやすい体調不良には、次のようなものがあります。

  • 気分が悪い
  • 吐き気や嘔吐
  • めまい
  • 頭痛
  • 腹痛
  • 下痢
  • 動悸
  • 息苦しさ
  • 耳の痛み
  • 乗り物酔い
  • 脱水
  • 足のむくみ
  • 不安や過呼吸
  • 失神しそうな感じ

機内の医療緊急事態では、失神や失神しそうな状態、呼吸器症状、吐き気・嘔吐などが比較的多いとされています。

早めに伝えることが大切

飛行機内で体調が悪くなったときに、「迷惑をかけたくない」と我慢してしまう方もいます。

しかし、症状が軽いうちに伝えた方が、座席の調整、水分補給、横になれる場所の確保、医療者への協力依頼などがしやすくなります。具合が悪くなったら、早めに客室乗務員へ知らせましょう。

まず機内で行いたい対応

飛行機内で体調が悪くなったときは、無理に我慢せず、安全に休める状態を作ることが大切です。ここでは、まず機内で行いたい対応について解説します。

客室乗務員に知らせる

体調が悪いと感じたら、まず客室乗務員に知らせます。

座席の呼び出しボタンを押す、近くの乗務員に声をかける、同行者に伝えてもらうなど、できる方法で早めに伝えましょう。

伝える内容は、難しく考える必要はありません。

  • いつから具合が悪いか
  • どのような症状か
  • 持病があるか
  • 薬を飲んでいるか
  • 妊娠中か
  • アレルギーがあるか
  • 同行者がいるか

このあたりを伝えられると、その後の対応がしやすくなります。

楽な姿勢をとる

気分不快、めまい、吐き気、立ちくらみがあるときは、できるだけ楽な姿勢をとります。

座ったまま頭を下げる、背もたれを少し倒す、衣服の締めつけをゆるめるなどで楽になることがあります。立ち上がるとふらつく場合は、無理に移動しないようにしましょう。

通路やトイレの近くで具合が悪くなった場合は、転倒を防ぐためにも、早めに周囲へ助けを求めます。

水分を少しずつ取る

脱水や乾燥、吐き気がある場合は、水分を少しずつ取ります。

一度にたくさん飲むと気持ち悪くなることがあるため、少量ずつが基本です。嘔吐した後は、落ち着いてから口をゆすぎ、少しずつ水分を再開します。

ただし、意識がぼんやりしている、飲み込む力が弱い、強い吐き気がある場合は、無理に飲ませないようにします。

症状別の対応

飛行機内での体調不良は、症状によって対応が変わります。ここでは、よくある症状別に対応の目安を紹介します。

吐き気や嘔吐があるとき

吐き気があるときは、無理に食事を続けず、楽な姿勢で休みます。

必要であればエチケット袋を使い、客室乗務員へ早めに伝えましょう。乗り物酔い、食べすぎ、緊張、胃腸炎、片頭痛など、原因はさまざまです。

嘔吐を繰り返す、水分が取れない、強い腹痛や発熱を伴う、意識がぼんやりする場合は、より注意が必要です。

めまいや失神しそうなとき

めまい、冷や汗、目の前が暗くなる感じ、失神しそうな感じがあるときは、立ち上がらずに休みます。

座った姿勢で頭を低くする、可能であれば横になるなどして、転倒を防ぎます。トイレに行く途中でふらつくこともあるため、無理に一人で移動しないようにしましょう。

失神、意識が戻りにくい、胸痛や息苦しさを伴う場合は、早急な対応が必要です。

息苦しさや胸の痛みがあるとき

息苦しさ、胸の痛み、強い動悸、冷や汗、唇の色が悪い、失神しそうな感じがある場合は、すぐに客室乗務員へ知らせます。

心臓や肺の病気、喘息発作、アレルギー反応、肺塞栓症、不安発作など、さまざまな原因が考えられます。

特に、突然の胸痛や息苦しさは、我慢して様子を見るよりも早めに助けを求めることが大切です。

頭痛が強いとき

軽い頭痛であれば、水分不足、寝不足、緊張、気圧変化などが関係していることがあります。

普段から使っている頭痛薬があり、使用して問題ない場合は、手元にある薬を使えることもあります。ただし、初めての強い頭痛、ろれつが回らない、片側の手足が動かしにくい、意識がぼんやりする、けいれんがある場合は注意が必要です。

このような症状があるときは、すぐに乗務員へ伝えましょう。

腹痛や下痢があるとき

腹痛や下痢があるときは、食事を無理に取らず、水分を少しずつ取ります。

長時間フライトでは、トイレに行きにくいことが不安になる場合もあります。早めに乗務員へ伝えておくと、状況に応じて配慮を受けやすくなります。

強い腹痛、血便、発熱、繰り返す嘔吐、ぐったりする場合は、単なる胃腸不調と決めつけないことが大切です。

緊急性が高い可能性がある症状

機内で体調が悪くなった場合、すべてが緊急というわけではありません。しかし、いくつかの症状は早急な対応が必要になることがあります。ここでは、緊急性が高い可能性がある症状について解説します。

すぐに知らせたい症状

次のような症状がある場合は、すぐに客室乗務員へ知らせましょう。

  • 意識がぼんやりしている
  • 失神した
  • けいれんがある
  • 強い胸の痛みがある
  • 急に息苦しくなった
  • 唇や顔色が悪い
  • 片側の手足が動かしにくい
  • ろれつが回らない
  • 強い頭痛が突然出た
  • 繰り返し吐いている
  • 水分が取れない
  • 強い腹痛がある
  • 出血が止まらない
  • 強いアレルギー症状がある

これらの症状では、機内の救急対応や医療者の協力が必要になることがあります。

感染症が疑われる場合

発熱に加えて、強い咳、息苦しさ、繰り返す嘔吐や下痢、発疹、意識の変化などがある場合は、周囲への感染対策も重要になります。

症状がある場合は、マスクを使用し、客室乗務員へ伝えます。到着後に医療機関の受診や移動の見直しが必要になることもあります。航空機では、一定の症状を伴う体調不良者について、到着前に関係機関へ報告される場合があります。

アレルギー反応が疑われる場合

食事や薬、ナッツ類、昆虫刺傷などをきっかけに、じんましん、唇やまぶたの腫れ、息苦しさ、咳、腹痛、嘔吐、意識がぼんやりするなどが出る場合があります。

特に、息苦しさや意識の変化を伴う場合は緊急性があります。アドレナリン自己注射薬を処方されている方は、機内に持ち込み、使い方を同行者にも共有しておくと安心です。

客室乗務員や機内の医療対応

飛行機内では、病院と同じ対応はできませんが、一定の救急対応体制があります。ここでは、客室乗務員や機内の医療対応について解説します。

客室乗務員は応急対応を行う

客室乗務員は、機内での体調不良や緊急時に対応するための訓練を受けています。

体調不良者の状態確認、応急処置、酸素の使用、AEDの準備、医療者への協力依頼、機長との連携など、状況に応じた対応が行われます。航空機には救急キットやAEDなどが搭載されている場合があります。

搭乗中の医療者に協力を求めることがある

機内で急病人が出た場合、医師や看護師などの医療者が搭乗していれば、機内アナウンスなどで協力を求めることがあります。

医療者は、本人の状態を確認し、客室乗務員や地上の医療支援と連携しながら対応します。ただし、最終的な運航判断や着陸地の判断は、機長や航空会社側が行います。

目的地以外へ着陸することもある

多くの機内医療トラブルでは、航空機は予定通り目的地へ向かいます。一方で、心停止、強い胸痛、脳卒中が疑われる症状、産科的な問題などでは、別の空港へ着陸する判断がされる場合があります。機内医療緊急事態のうち、目的地以外へ着陸するケースは一部に限られます。

持病がある人が搭乗前に確認したいこと

持病がある方は、飛行機に乗る前の準備が重要です。ここでは、持病がある人が搭乗前に確認したいことについて解説します。

主治医に相談した方がよい場合

次のような場合は、旅行前に主治医へ相談しておくと安心です。

  • 心臓病がある
  • 呼吸器疾患がある
  • 糖尿病がある
  • てんかんがある
  • 脳卒中の既往がある
  • 最近手術を受けた
  • 血栓症の既往がある
  • 妊娠中である
  • 酸素療法を受けている
  • 体調が最近安定していない

航空機では、気圧や酸素濃度の変化、長時間移動の負担があるため、持病によっては事前確認が必要になることがあります。慢性疾患や最近の手術、血栓症の既往などがある場合は、渡航前に状態を確認することが重要です。

薬は手荷物に入れる

常用薬は、預け荷物ではなく機内持ち込みの手荷物に入れておきましょう。

預け荷物が遅れたり、乗り継ぎで受け取れなかったりすることがあります。薬は旅行日数より少し多めに準備し、薬の名前や用量が分かるメモも持っておくと安心です。

液体薬、注射薬、医療機器などがある場合は、航空会社や渡航先のルールも確認しておきましょう。

英文の診断書や薬剤情報が役立つことがある

海外旅行では、持病や薬の説明を英語で求められることがあります。

持病がある方、医療機器を使っている方、注射薬や特殊な薬を持参する方は、診断書や薬剤情報を準備しておくと、空港や現地医療機関で説明しやすくなります。

機内に持っておきたい体調管理グッズ

飛行機内で体調が悪くなったときに備えて、必要なものは手元に置いておくことが大切です。ここでは、機内に持っておきたい体調管理グッズを紹介します。

基本の持ち物

機内持ち込みバッグには、次のようなものを入れておくと安心です。

  • 常用薬
  • 頭痛薬や胃腸薬など普段使い慣れた薬
  • 酔い止め薬
  • 目薬
  • マスク
  • のど飴
  • ウェットティッシュ
  • エチケット袋
  • 体温計
  • 保険証や旅行保険の情報
  • かかりつけ医の情報
  • 薬の名前や用量のメモ

薬は「必要になったらスーツケースから出す」では遅いことがあります。機内で使う可能性があるものは、座席で取り出せる場所に入れておきましょう。

持病がある人の追加準備

持病がある方は、以下も検討します。

  • 予備の薬
  • 血糖測定器
  • インスリンや注射薬
  • 吸入薬
  • アドレナリン自己注射薬
  • 医療機器の予備電池
  • 診断書
  • 薬剤情報
  • 緊急連絡先

自分に必要なものは病気や治療内容によって異なります。旅行前に確認しておくと、機内での不安を減らしやすくなります。

体調不良を防ぐために搭乗前からできること

機内での体調不良を完全に防ぐことはできませんが、搭乗前から整えておくことでリスクを下げやすくなります。ここでは、体調不良を防ぐために搭乗前からできることについて解説します。

睡眠不足を避ける

旅行前日は荷造りや移動準備で睡眠が短くなりがちです。

睡眠不足は、頭痛、吐き気、めまい、乗り物酔い、疲労感につながることがあります。早朝便の場合は、前日までに荷物を整え、できるだけ睡眠時間を確保しましょう。

水分を取っておく

機内は乾燥しやすく、トイレを避けるために水分を控えてしまう方もいます。

搭乗前から少しずつ水分を取り、機内でもこまめに飲みましょう。アルコールは飲みすぎると脱水や眠気、気分不快につながることがあるため、控えめにするのが安心です。

食事は無理をしない

搭乗前に食べすぎると、機内で胃もたれや吐き気が出ることがあります。

一方で、空腹が強すぎても気分が悪くなることがあります。消化のよいものを軽めに取り、自分の体調に合わせて調整しましょう。

到着後に受診を考えたい症状

機内で体調が悪くなっても、到着後に落ち着くことがあります。一方で、到着後に医療機関へ相談した方がよい症状もあります。ここでは、到着後に受診を考えたい症状について解説します。

症状が続く場合

機内で休んでも、到着後も症状が続く場合は注意が必要です。

次のような場合は、医療機関への相談を考えましょう。

  • 嘔吐や下痢が続く
  • 発熱がある
  • 強い腹痛がある
  • 頭痛が続く
  • めまいやふらつきが続く
  • 水分が取れない
  • ぐったりしている

旅行中は予定を優先したくなりますが、体調が回復しない場合は早めの相談が安心です。

胸痛や息苦しさがある場合

到着後も胸の痛み、息苦しさ、動悸、冷や汗、失神しそうな感じがある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

長時間フライト後は、エコノミークラス症候群に関連した症状にも注意が必要です。片足の腫れや痛み、急な息苦しさ、胸の痛みがある場合は、旅行疲れと決めつけないようにします。

目や耳の症状が強い場合

飛行機では、気圧変化による耳の痛みや、乾燥による目の不快感が出ることがあります。

耳の強い痛み、聞こえにくさ、めまい、目の強い痛み、視力低下、強い充血がある場合は、耳鼻科や眼科への相談を考えます。コンタクトレンズを使用している方で目の痛みが続く場合は、レンズの使用を控えましょう。

飛行機内で体調が悪くなったときのチェックリスト

機内で体調が悪くなったときは、慌てずに次の点を確認しましょう。

すぐに行うこと

  • 客室乗務員へ知らせる
  • 無理に立ち上がらない
  • 楽な姿勢をとる
  • 衣服の締めつけをゆるめる
  • 水分を少しずつ取る
  • 同行者に症状を伝える
  • 常用薬や持病を伝える
  • 必要な薬を手元に出す

すぐに伝えたい症状

  • 意識がぼんやりしている
  • 失神した
  • 胸の痛みがある
  • 息苦しい
  • 強い頭痛がある
  • 片側の手足が動かしにくい
  • ろれつが回らない
  • けいれんがある
  • 繰り返し吐く
  • 強い腹痛がある
  • アレルギー症状が強い

搭乗前に準備しておきたいこと

  • 常用薬を手荷物に入れる
  • 薬の名前と用量をメモする
  • 持病について主治医に相談する
  • 旅行保険や緊急連絡先を確認する
  • 水分やマスクを準備する
  • 体調不良時に同行者へ伝える内容を共有する

まとめ

飛行機内で体調が悪くなると、不安を感じる方は少なくありません。

機内ではすぐに病院を受診できないため、具合が悪いと感じたら、早めに客室乗務員へ伝えることが大切です。吐き気、めまい、息苦しさ、胸の痛み、失神しそうな感じなどがある場合は、我慢しすぎないようにしましょう。

持病がある方、最近手術を受けた方、妊娠中の方、過去に血栓症を起こした方などは、旅行前に主治医へ相談しておくと安心です。常用薬は必ず手荷物に入れ、薬の情報や緊急連絡先も確認しておきましょう。

飛行機内の体調不良は、早めに伝えることで対応しやすくなります。無理をせず、必要な準備をして、移動中もできるだけ安心して過ごせるようにしておきましょう。

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