旅行中は、観光地で転ぶ、海や川で足を切る、ホテルやキャンプ場で手を切るなど、思わぬケガをすることがあります。

すり傷や切り傷は小さく見えても、旅先では砂、土、水、汗などで傷が汚れやすく、対応が遅れると感染につながることがあります。

この記事では、旅行中にすり傷・切り傷をしたときの応急処置、受診の目安、旅行前に準備しておきたいものについて解説します。

まずは傷の状態を落ち着いて確認する

すり傷や切り傷をしたときは、慌てて薬を塗る前に、まず傷の状態を確認することが大切です。

出血の量、傷の深さ、汚れの有無、痛みの強さを見て、応急処置で様子を見られるか、医療機関へ相談した方がよいかを判断します。

ここでは、最初に確認したいポイントについて解説します。

出血が多いかどうかを確認する

まず、出血の量を確認します。

少しにじむ程度の出血であれば、清潔なティッシュやガーゼで押さえながら落ち着いて対応します。

一方で、血が止まらない、傷口から勢いよく出血している、服やタオルがすぐ血で濡れるような場合は、すぐに強く圧迫しながら医療機関への相談を考えます。

傷が深いか、開いているかを見る

傷が浅いすり傷であれば、洗って保護することで対応できることがあります。

ただし、皮膚がぱっくり開いている、傷の中が深く見える、脂肪のような黄色い組織が見える、動かすと傷が開く場合は、縫合などの処置が必要になることがあります。

顔、手、指、関節の近くの傷は、見た目や動きに影響することもあるため、早めに医療機関へ相談しましょう。

出血しているときは清潔な布で圧迫する

出血があるときは、まず止血を優先します。

傷口を強くこすったり、何度も確認したりすると、かえって出血が続くことがあります。

ここでは、出血しているときの基本的な対応について解説します。

清潔なガーゼやタオルで押さえる

出血している部分に、清潔なガーゼ、タオル、ハンカチなどを当てて、しっかり押さえます。

数分間は途中で何度もめくらず、続けて圧迫します。傷の位置によっては、心臓より少し高い位置に上げると出血が落ち着きやすくなります。

ティッシュを直接強く押しつけると、傷に細かい紙片がつくことがあります。できればガーゼや清潔な布を使うとよいでしょう。

止まらない出血は無理に様子を見ない

10分ほどしっかり圧迫しても出血が止まらない場合は、医療機関への相談を考えます。

特に、動脈性の出血が疑われる場合、深い切り傷、ガラスや刃物による傷、頭や顔の出血は注意が必要です。

「小さい傷だから大丈夫」と決めつけず、出血の量と止まり方を見て判断しましょう。

傷は流水でしっかり洗う

すり傷や切り傷では、傷口についた砂、土、ほこりなどを落とすことが大切です。

旅行中は屋外でのケガが多く、傷に汚れが入りやすいため、洗浄が不十分だと感染の原因になることがあります。

ここでは、傷の洗い方について解説します。

まず手を清潔にする

傷を触る前に、できれば石けんと流水で手を洗います。

手洗いが難しい場所では、アルコール手指消毒を使ってから処置をします。ただし、アルコールを傷口に直接かける必要はありません。

処置をする人の手が汚れていると、傷に細菌が入りやすくなります。旅先ではまず「自分の手をきれいにする」ことを忘れないようにしましょう。

傷口はきれいな水で洗い流す

傷口は、水道水などの清潔な水でやさしく洗い流します。

砂や小石がついている場合は、流水で十分に流します。取れない汚れを無理にこすり取ろうとすると、傷を広げることがあります。

洗っても汚れが残る、異物が深く刺さっている、強い痛みがある場合は、医療機関で処置してもらいましょう。

石けんは傷の周りに使う

石けんは、傷の周囲の皮膚を洗うのに使います。

傷口の中に石けんや強い消毒液を何度も入れると、しみたり刺激になったりすることがあります。まずは流水で汚れを落とすことを優先しましょう。

洗った後は清潔に保護する

傷を洗った後は、そのまま放置せず、清潔に保護します。

旅行中は汗をかいたり、砂や水に触れたりしやすいため、傷を守る工夫が必要です。

ここでは、傷を保護するときのポイントについて解説します。

清潔なガーゼや絆創膏で覆う

洗った後は、水分を軽く拭き取り、清潔なガーゼや絆創膏で傷を覆います。

傷口がむき出しのままだと、衣類との摩擦や汚れで痛みが増えることがあります。特に歩く場所、手指、ひじ、ひざなどは、傷がこすれやすいため保護しておくと安心です。

濡れたら貼り替える

絆創膏やガーゼが濡れた場合は、早めに貼り替えます。

海、プール、温泉、雨、汗などで濡れたままにしていると、傷の周りがふやけたり、汚れが入りやすくなったりします。

旅行中は、予備の絆創膏やガーゼを多めに持っておくと便利です。

傷を完全に密閉しすぎない

防水タイプの絆創膏は便利ですが、長時間貼りっぱなしにすると、汗や浸出液で傷の周りがふやけることがあります。

水に触れる予定が終わった後は、傷の状態を確認し、必要に応じて貼り替えましょう。

旅行中にやりがちな対応に注意する

旅先では手元にあるもので何とかしようとして、かえって傷を悪化させてしまうことがあります。

特に屋外や海辺、キャンプ場では、清潔ではないものを傷に使わないことが大切です。

ここでは、避けたい対応について解説します。

傷をこすりすぎない

汚れを落とそうとして、傷口を強くこすると痛みが増え、皮膚のダメージが広がることがあります。

まずは流水で洗い流し、取れない汚れがある場合は無理をしないようにしましょう。

民間療法を使わない

食べ物、植物、海水、泥、自己判断の薬などを傷に塗るのは避けましょう。

一見よさそうに思えても、傷に細菌が入る原因になることがあります。旅行中は「清潔に洗う」「清潔に覆う」を基本にします。

古い薬や人の薬を使わない

以前もらった抗生物質の軟膏や、同行者の薬を自己判断で使うのは避けましょう。

傷の状態によって必要な処置は異なります。痛みが強い、腫れている、膿が出ている場合は、薬でごまかさず医療機関に相談してください。

医療機関を受診した方がよいサイン

小さなすり傷や浅い切り傷は、応急処置で様子を見られることがあります。

ただし、旅先では受診のタイミングを逃すと、予定変更が必要になるほど悪化することもあります。

ここでは、医療機関への相談を考えたいサインについて解説します。

すぐ相談したい傷

次のような場合は、旅行先でも医療機関への相談を考えましょう。

・出血が止まらない
・傷が深い
・傷口が大きく開いている
・ガラス、金属、木片などが刺さっている
・汚れが残っている
・顔、手、指、関節の近くの傷
・動物や人にかまれた傷
・海、川、土、泥で汚れた傷
・強い痛みやしびれがある
・指や手足が動かしにくい

特に、深い傷や汚れた傷は、縫合や洗浄、破傷風への対応が必要になることがあります。

感染が疑われるサイン

傷を処置した後も、次のような変化がある場合は注意が必要です。

・赤みが広がる
・腫れが強くなる
・痛みが増える
・熱を持っている
・膿が出る
・赤い線のようなものが皮膚に伸びる
・発熱がある
・体がだるい

感染が疑われる場合は、絆創膏を貼って様子を見るだけでは不十分なことがあります。旅行先でも早めに相談しましょう。

破傷風や動物にかまれた傷にも注意する

旅行中の傷で忘れたくないのが、破傷風や動物にかまれた傷です。

特に土、泥、ほこりが入った傷、深い刺し傷、動物による傷では、通常のすり傷とは違った対応が必要になることがあります。

ここでは、旅行中に注意したい感染症について解説します。

土や泥で汚れた傷は破傷風に注意

破傷風は、土などに存在する細菌が傷から入ることで起こることがあります。

日本国内でも海外でも、土や泥で汚れた傷、深い刺し傷、古い釘や木片による傷では注意が必要です。

破傷風ワクチンの接種歴が不明な場合や、最後の接種から長い期間が経っている場合は、医療機関で相談しましょう。

動物にかまれた傷は必ず相談する

犬、猫、猿、こうもりなどにかまれた場合は、小さな傷に見えても医療機関への相談が必要です。

動物の口の中には細菌が多く、感染しやすい傷です。海外では狂犬病のリスクも地域によって異なるため、特に野生動物や飼い主が不明な動物にかまれた場合は、すぐに相談しましょう。

海や川での傷も油断しない

海や川、湖でできた傷は、水に含まれる細菌が傷に入ることがあります。

サンゴ、岩、貝殻、ガラス片などで足を切った場合は、洗浄後も痛みや腫れが強くならないか確認しましょう。

赤みや腫れが広がる、痛みが増える、発熱する場合は医療機関へ相談してください。

旅行前に準備しておきたい救急セット

旅行中のすり傷や切り傷は、必要なものが手元にあるだけで落ち着いて対応しやすくなります。

特に子連れ旅行、キャンプ、海、山、海外旅行では、簡単な救急セットを持っておくと安心です。

ここでは、旅行前に準備しておきたいものを紹介します。

持っておきたいもの

・絆創膏
・大きめの絆創膏
・清潔なガーゼ
・包帯
・テープ
・人工皮膚タイプの保護材
・使い捨て手袋
・小さなはさみ
・ピンセット
・清潔なティッシュ
・手指消毒
・常備薬
・予備のビニール袋
・保険証や医療証
・海外旅行保険の連絡先

子どもと一緒の旅行では、絆創膏のサイズを複数用意しておくと便利です。

すぐ使うものは手荷物へ

救急セットは、スーツケースの奥に入れず、すぐ取り出せる場所に入れておきましょう。

観光中に使う可能性があるものは、リュックやショルダーバッグに分けておくと安心です。

海外旅行では、現地で同じものがすぐ買えるとは限りません。出発前に最低限のセットを作っておきましょう。

まとめ:旅先の傷は「洗う・止血・保護・受診判断」が大切

旅行中のすり傷や切り傷では、まず出血を確認し、必要に応じて圧迫して止血します。

その後、傷を流水で洗い、清潔なガーゼや絆創膏で保護しましょう。目に見える汚れが残る傷、深い傷、出血が止まらない傷、動物にかまれた傷、海や土で汚れた傷は、旅行先でも医療機関への相談を考えることが大切です。

また、赤み、腫れ、痛みの悪化、膿、発熱などがある場合は、感染の可能性があります。

旅先では無理をせず、必要なときに相談できるよう、救急セットと保険・医療機関の情報を準備しておきましょう。

参考文献

『破傷風(Tetanus)』(厚生労働省検疫所 FORTH)
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/name74.html

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