ト海外旅行を予定していると、「ワクチンは必要?」「持病があるけれど旅行して大丈夫?」「薬はどう持っていけばいい?」と迷うことがあります。

旅行先によって、流行している感染症、医療事情、必要な予防接種、薬の持ち込みルールは異なります。国内旅行ではあまり意識しないことでも、海外では事前に確認しておいた方がよいことがあります。

そのようなときに相談先の候補になるのが、トラベルクリニック渡航外来です。

この記事では、トラベルクリニックでは何を相談できるのか、どのような人が受診を考えたいのか、受診前に準備しておきたいことについて解説します。

トラベルクリニックとは

トラベルクリニックとは、海外渡航前後の健康管理について相談できる医療機関です。

旅行先の感染症、予防接種、持病の管理、常備薬、現地での体調不良への備えなど、旅行に関係する医療相談を扱います。

医療機関によっては、「渡航外来」「海外渡航外来」「旅行外来」などの名称で診療していることもあります。

旅行前の健康準備は、後回しになりがちですが、体調は万全であることがとても大切です。

予防接種について相談できる

トラベルクリニックで相談する内容として多いのが、海外渡航前の予防接種です。

旅行先によっては、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、日本脳炎、腸チフス、黄熱などのワクチンを検討することがあります。どのワクチンが必要かは、渡航先、滞在期間、渡航目的、現地での活動内容、宿泊環境、過去の接種歴によって変わります。

予防接種の種類によっては複数回の接種が必要なものもあるため、海外渡航を予定している場合は、できるだけ出発3か月以上前からトラベルクリニックや渡航外来で相談するようにしましょう。

また、FORTHの予防接種実施機関検索では、県名、施設名、ワクチン名などを入力して、渡航者向け予防接種を行う医療機関を検索できます。ただし、掲載後に取り扱いが変わる場合があるため、事前に医療機関へ確認してから受診する必要があります。

渡航先で注意したい感染症を相談できる

海外旅行では、地域によって注意したい感染症が異なります。

蚊が媒介する感染症、食べ物や水から感染する病気、動物との接触で感染する病気、土壌やけがから感染する病気など、旅行先によってリスクが変わります。

トラベルクリニックでは、渡航先に応じて次のような点を相談できます。

  • 水や食事で注意したいこと
  • 蚊に刺されないための対策
  • 動物との接触で注意すること
  • けがをしたときの対応
  • マラリア予防薬が必要か
  • 下痢や発熱が出たときの対応
  • 帰国後に受診すべき症状

観光旅行、留学、出張、ボランティア、医療支援、フィールドワークでは、同じ国でも必要な対策が変わることがあります。

ホテル中心の旅行と、農村部や野外活動が多い旅行では、リスクの種類が違うためです。

持病がある人の旅行相談ができる

持病がある人にとって、旅行前の相談はとても重要です。

高血圧、糖尿病、喘息、心臓病、腎臓病、てんかん、アレルギー、免疫抑制薬を使っている人、妊娠中の人などは、旅行先や移動方法によって注意点が変わります。

トラベルクリニックや渡航外来では、次のような相談ができます。

  • 今の体調で旅行してよいか
  • 長時間フライトで注意すること
  • 時差がある場合の薬の飲み方
  • 持病の薬をどう持参するか
  • 旅行中に症状が悪化したときの対応
  • 現地医療機関の受診をどう考えるか
  • 海外旅行保険で確認すべきこと

かかりつけ医へ体調管理について相談することに加え、旅行先の予防接種や注意点、携帯した方がよい薬については、トラベルクリニックへ相談すると安心です。

持病がある人は、まず普段診てもらっている主治医に相談し、必要に応じてトラベルクリニックを併用するとよいでしょう。

薬の持参や英文書類について相談できる

海外旅行では、薬の持ち込みルールにも注意が必要です。

日本で処方されている薬でも、渡航先によっては持ち込みに制限がある場合があります。睡眠薬、向精神薬、医療用麻薬、一部の痛み止め、ADHD治療薬、注射薬などは、国によって診断書や事前申請が必要になることがあります。

トラベルクリニックでは、次のような内容を相談できます。

  • 処方薬を何日分持っていくか
  • 薬を手荷物に入れてよいか
  • お薬手帳や薬剤情報を持参すべきか
  • 英文診断書や薬剤証明書が必要か
  • 注射薬や冷所保存薬をどう管理するか
  • 現地で体調不良になった場合の薬の使い方

薬は「持っていけば終わり」ではなく、説明できる形で持っていくことが大切です。

特に海外では、薬の名前、一般名、用量、治療目的を説明できる文書があると安心です。

旅行者下痢症や常備薬について相談できる

旅行中の体調不良で多いもののひとつが、胃腸の不調です。

食事や水が変わることで、腹痛、下痢、吐き気などが起こることがあります。旅行者下痢症への対応は、渡航先、症状の程度、発熱や血便の有無、持病の有無によって変わります。

トラベルクリニックでは、旅行先に合わせて次のような相談ができます。

  • 整腸薬や胃薬を持っていくか
  • 下痢止めを使ってよい場面
  • 経口補水液の準備
  • 抗菌薬が必要になるケース
  • 食事や水で気をつけること
  • 受診すべき症状

市販薬を適当に詰め込むより、「自分の旅行に必要な薬」を相談して選ぶ方が現実的です。

高山病や時差、長時間移動について相談できる

旅行先によっては、高山病や時差、長時間移動への対策も必要になります。

標高の高い地域へ行く場合、高山病への注意が必要です。

長時間フライトでは、脱水、むくみ、血栓、睡眠リズムの乱れなども起こりやすくなります。

トラベルクリニックでは、次のような内容を相談できます。

  • 高山病の予防と対策
  • 長時間フライト中の過ごし方
  • 脱水や血栓予防
  • 時差がある場合の薬の飲み方
  • 睡眠薬を使うべきか
  • 妊娠中や高齢者の移動時の注意点

特に、心臓病、肺の病気、血栓症の既往、妊娠中、持病がある人は、旅行前に移動そのもののリスクも確認しておくと安心です。

子ども連れ旅行や留学前の相談もできる

子ども連れの海外旅行や留学前にも、トラベルクリニックは相談先になります。

子どもは大人より体調変化が早く、薬の量も年齢や体重によって変わります。また、海外では日本と医療制度や薬の使い方が異なるため、事前準備が大切です。

相談できる内容には、次のようなものがあります。

  • 子どもに必要な予防接種
  • 母子手帳や接種歴の確認
  • 子ども用の常備薬
  • 発熱や下痢のときの対応
  • 虫よけ、日焼け、脱水対策
  • 留学前の健康診断や英文書類
  • 学校指定のワクチン証明

留学や長期滞在では、学校や滞在先から予防接種証明健康診断書を求められることがあります。必要書類は発行に時間がかかることもあるため、早めに確認しておきましょう。

帰国後の発熱や体調不良も相談できる

トラベルクリニックは、出発前だけでなく、帰国後の体調不良でも相談先になります。

海外から帰国した後に、発熱、下痢、発疹、咳、黄疸、強いだるさなどがある場合は、旅行先で感染症にかかった可能性も考えます。受診時には、いつ、どこへ行き、どのような活動をしたかを伝えることが重要です。

帰国後に受診を考えたい症状には、次のようなものがあります。

  • 発熱
  • 下痢が続く
  • 発疹
  • 咳が続く
  • 強い倦怠感
  • 黄疸
  • 虫刺され後の腫れや痛み
  • 動物にかまれた、ひっかかれた
  • 現地で体調を崩したあと改善しない

海外旅行後の体調不良では、一般的な風邪や胃腸炎だけでなく、渡航先特有の感染症も考慮する必要があります。

受診前に準備しておきたいこと

トラベルクリニックを受診するときは、旅行内容を整理しておくと相談がスムーズです。

受診前に準備したい情報は、次の通りです。

  • 渡航先の国・地域
  • 出発日、帰国日
  • 滞在期間
  • 都市部か農村部か
  • 観光、出張、留学、ボランティアなどの目的
  • 現地での活動内容
  • 宿泊環境
  • これまでの予防接種歴
  • 母子手帳
  • 持病
  • 服用中の薬
  • アレルギー
  • 妊娠の有無
  • 海外旅行保険の内容

「どこの国へ行くか」だけでなく、「その国で何をするか」が大事です。リゾートでのんびりする旅行と、森や農村部に入る旅行では、必要な備えが変わります。

トラベルクリニックはいつ受診する?

トラベルクリニックは、できるだけ早めに受診するのが理想です。

ワクチンには、複数回接種が必要なものや、効果が出るまでに時間がかかるものがあります。

また、海外渡航のためのワクチンについては、できるだけ出発3か月以上前から相談することもすすめられています。

ただし、出発直前だから意味がないわけではありません。直前でも、常備薬、感染症対策、虫よけ、食事や水の注意点、現地での受診先確認など、できる準備はあります。

トラベルクリニックの探し方

トラベルクリニックや渡航外来を探すときは、FORTHの予防接種実施機関検索や、日本渡航医学会の国内トラベルクリニック一覧などが参考になります。

FORTHの予防接種実施機関検索では、県名、施設名、ワクチン名などで検索できますが、掲載されている情報は全医療機関を網羅したものではなく、登録を希望した医療機関の情報に基づいています。掲載後に取り扱いが変わる場合もあるため、事前に医療機関へ確認してから受診しましょう。

日本渡航医学会の国内トラベルクリニック一覧も、受診先を探す際の参考になります。専門的な相談やワクチンの取り扱いについては、近隣のトラベルクリニックへ直接問い合わせる形になります。

まとめ

トラベルクリニックでは、海外旅行や留学、出張前の健康準備について相談できます。

相談できる内容は、予防接種、渡航先の感染症、持病の管理、処方薬の持参、英文診断書、旅行者下痢症、虫よけ、高山病、長時間移動、子ども連れ旅行、帰国後の体調不良など幅広くあります。

特に、海外旅行、長期滞在、留学、妊娠中、子ども連れ、持病がある人、医療機関に行きにくい地域へ行く人は、早めに相談しておくと安心です。

旅行先で慌てないためには、出発前の準備が大切です。行き先や活動内容が決まったら、必要に応じてトラベルクリニックや渡航外来に相談しておきましょう。

参考文献

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るんるん
30代医師夫婦|旅行に役立つ情報発信|子どもは2人