暑い時期の旅行では、観光地を歩く時間が長くなり、駅や駐車場、屋外の待ち時間などでも体に熱がたまりやすくなります。特に高齢者は、暑さやのどの渇きを感じにくく、本人が気づかないうちに脱水や熱中症が進むことがあります。

厚生労働省は、熱中症患者のおよそ半数を65歳以上の高齢者が占めるとしており、暑さを避けることと、こまめな水分補給が重要です。持病や服薬の状況によっては、水分や塩分のとり方に個別の注意が必要な場合もあります。

この記事では、高齢者旅行で注意したい脱水と熱中症について解説します。

出発前に体調と服用中の薬を確認する

旅行当日の朝は、普段どおり歩けるか、食事や水分をとれているかを確認しましょう。

次のような場合は、予定を短くするか、外出を見合わせることも検討します。

・発熱や強いだるさがある
・下痢や嘔吐がある
・食欲がない
・前日から水分を十分にとれていない
・寝不足が続いている
・めまいやふらつきがある
・血圧や持病の状態が普段と違う
・足腰の痛みが強い

利尿薬などを服用している場合や、心臓病、腎臓病、高血圧などで水分や塩分の制限を受けている場合は、一般的な熱中症対策をそのまま当てはめられないことがあります。旅行前に主治医へ、水分補給の量や注意点を確認しておくと安心です。

普段使っている薬は旅行日数分に加えて、交通機関の遅れなどに備えた予備も準備します。薬はスーツケースだけでなく、すぐ取り出せる手荷物にも入れておきましょう。

のどが渇く前に少量ずつ水分をとる

高齢者は、体内の水分が不足していても、のどの渇きを強く感じないことがあります。そのため、本人の「飲みたくない」「まだ喉は渇いていない」という感覚だけに頼らず、時間を決めて水分をとることが大切です。

旅行中は、例えば次のタイミングで水分をとります。

・起床したとき
・ホテルを出る前
・乗り物に乗る前後
・観光地に到着したとき
・休憩するたび
・食事のとき
・入浴の前後
・就寝前

一度に大量に飲むよりも、少量ずつこまめに飲む方が続けやすくなります。水筒やペットボトルは荷物の奥ではなく、すぐ取り出せる場所に入れておきましょう。

水分量の確認が難しい場合は、500mLのペットボトルを使い、どの程度飲んだかを家族と共有する方法もあります。尿の回数が少ない、色が濃い、口の中が乾くといった変化も脱水を疑う手がかりです。

昼の屋外観光を避けて涼しい場所で休む

熱中症対策では、水分補給だけでなく、暑い環境を避けることが重要です。

旅行の日程は、屋外の観光を比較的涼しい朝に回し、気温が上がる時間帯は、博物館、商業施設、飲食店などの冷房がある場所で過ごせるように組み立てましょう。

旅行前や当日は、気温だけでなく、暑さ指数も確認します。暑さ指数は、気温、湿度、日射などを踏まえて熱中症の危険度を示す指標で、28以上になると熱中症患者が著しく増えるとされています。

熱中症警戒アラートが発表されている日は、高齢者は特に注意が必要です。屋外で予定どおり観光することにこだわらず、次のような変更を検討します。

・出発時間を早める
・屋外の滞在時間を短くする
・タクシーやバスを利用する
・日陰の多いルートへ変更する
・屋内施設へ行き先を変える
・外出自体を中止する

熱中症警戒アラートが出ていない日でも、体調や活動内容によっては熱中症になる可能性があります。

帽子や冷却用品を持ち、服装を調整する

旅行中は、直射日光を避け、体に熱をためない服装を選びましょう。

持っていきたいものは、次のとおりです。

・つばのある帽子
・日傘
・通気性のよい衣類
・汗を乾かしやすい肌着
・着替え
・冷却タオル
・保冷剤
・うちわや扇子
・携帯扇風機
・汗拭き用タオル

保冷剤を使う場合はタオルなどで包み、首の周囲やわきの下などを冷やします。凍ったものを直接皮膚に長時間当てると、皮膚を傷めることがあるため注意してください。

携帯扇風機は便利ですが、気温が高い環境で風を当てるだけでは、十分に体温を下げられないことがあります。冷房のある場所へ移動する、濡れたタオルで皮膚を冷やすなど、ほかの対策と組み合わせましょう。

日陰やベンチが少ない観光地では、折りたたみ式の軽い椅子が役立つこともあります。ただし、休憩用品があっても暑い場所に長くとどまらず、涼しい施設へ移動することを優先します。

経口補水液は普段の飲み物と使い分ける

旅行中の普段の水分補給では、水やお茶などを基本とし、大量に汗をかいた場合は、食事や飲み物から塩分も補います。

経口補水液は、水や電解質をすばやく吸収できるように調整された、脱水時に使用する飲み物です。一般的なスポーツドリンクよりもナトリウムやカリウムを多く含み、普段の水分補給として常時飲むものではありません。

経口補水液の使用を考えるのは、例えば次のような場面です。

・大量に汗をかいて脱水が疑われる
・発熱や食欲低下で水分摂取が減っている
・下痢や嘔吐がある
・口が乾き、尿が減っている
・軽度から中等度の脱水が疑われる

経口補水液にはナトリウムやカリウム、糖質が含まれます。心臓病、腎臓病、糖尿病などがある人や、塩分・水分制限を受けている人は、自己判断で大量に飲まず、医師や薬剤師へ相談してください。

意識が悪い、むせて飲めない、自力で水分をとれない場合は、無理に飲ませず救急要請を考えます。

いつもと違う様子があれば早めに休ませる

高齢者の熱中症では、本人が「暑い」「具合が悪い」とはっきり訴えないことがあります。同行者が普段との違いに気づくことが大切です。

注意したい変化は、次のとおりです。

・急に口数が少なくなった
・歩く速度が遅くなった
・足元がふらつく
・顔が赤い、または青白い
・汗が多い、または暑いのに汗をかいていない
・頭痛や吐き気がある
・筋肉がつる
・強いだるさがある
・ぼんやりしている
・受け答えがおかしい
・自力で水分を飲めない

熱中症が疑われる場合は、すぐに冷房のある場所や日陰へ移動し、衣類を緩めて体を冷やします。意識がはっきりしていて自力で飲める場合は、水分や塩分を補給します。

呼びかけへの反応がおかしい、自力で水分を飲めない、けいれんがある、まっすぐ歩けない場合は、ためらわず119番へ連絡してください。

まとめ:高齢者旅行は「暑くなる前に休む」ことが大切

高齢者旅行では、脱水や熱中症の症状が出てから対処するのではなく、暑くなる前、疲れる前に休むことが大切です。

旅行前と旅行中には、次の点を確認しましょう。

・当日の体調と服用中の薬を確認する
・のどが渇く前に水分をとる
・水筒をすぐ取り出せる場所に入れる
・暑さ指数と熱中症警戒アラートを確認する
・昼の屋外観光を避ける
・冷房のある休憩場所を調べておく
・帽子、日傘、冷却用品を準備する
・経口補水液を普段の飲み物にしない
・同行者が顔色や反応を確認する
・体調が悪ければ予定を中止する

高齢者本人が「まだ大丈夫」と話していても、歩く速度が落ちた、口数が減った、顔色が悪いといった変化があれば、早めに休憩を取りましょう。

観光の予定をすべてこなすことよりも、涼しい場所で休みながら無理のないペースで楽しむことが大切です。

参考文献

『熱中症を防ぎましょう』(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/prevent.html

『高齢者のための熱中症対策』(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pamph.html

『熱中症警戒アラート』(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/heat_alert.html

『環境省熱中症予防情報サイト』(環境省)
https://www.wbgt.env.go.jp/

『暑さ指数(WBGT)について』(環境省)
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

『経口補水液について』(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/oral_rehydration_solution

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