旅行中に子どもが吐いたときの対応
旅行中に子どもが突然吐くと、移動を続けてよいのか、何を飲ませればよいのか、病院へ行くべきか迷いやすくなります。
子どもの嘔吐は、胃腸炎、食べすぎ、乗り物酔い、発熱、熱中症、食中毒、強い咳、頭を打った後の変化など、さまざまな原因で起こります。1回だけ吐いて落ち着くこともありますが、何度も吐く、水分がとれない、ぐったりしている、強い腹痛や頭痛がある場合は注意が必要です。
大切なのは、吐いた回数だけでなく、子どもの様子、水分がとれているか、尿が出ているか、意識や呼吸に変化がないかを見ることです。
この記事では、旅行中に子どもが吐いたときの対応と、受診を考えたいサインについて解説します。
まずは落ち着いて姿勢と様子を確認する

子どもが吐いたら、まずは安全な姿勢をとらせましょう。
横になっているときに吐いた場合は、吐いたものがのどに詰まらないように、顔を横に向けます。座れる場合は、上体を少し起こして休ませます。吐いた直後に無理に歩かせたり、すぐ移動を再開したりしないようにしましょう。
次に、子どもの様子を確認します。
・意識がはっきりしているか
・呼びかけに反応するか
・呼吸が苦しそうでないか
・顔色が悪くないか
・ぐったりしていないか
・強い腹痛や頭痛がないか
・発熱がないか
・下痢がないか
・発疹がないか
・頭を打った後ではないか
吐いた後に少しすっきりして、顔色が戻り、水分を少しずつ飲める場合は、休ませながら様子を見ることもあります。
一方で、吐いた後もぐったりしている、反応が悪い、呼吸が苦しそう、強い痛みがある場合は、旅先でも医療機関へ相談しましょう。
吐いた直後はすぐに飲ませすぎない

吐いた直後に、脱水が心配で水分をたくさん飲ませたくなることがあります。
ただ、吐いた直後に一気に飲ませると、胃が刺激されてまた吐いてしまうことがあります。まずは少し休ませ、口をゆすげる年齢であれば口の中を軽くきれいにします。
水分を再開するときは、少量から始めます。スプーン1杯、ひと口、数mL程度を目安に、数分おきにゆっくり飲ませます。飲んでも吐かなければ、少しずつ量を増やします。
飲ませるものは、水、麦茶、経口補水液などを状況に応じて選びます。下痢や発熱を伴う場合、何度も吐いた場合は、経口補水液が役立つことがあります。
一方で、ジュース、炭酸飲料、乳酸菌飲料、甘いスポーツドリンクなどは、胃腸の状態によっては吐き気や下痢を悪化させることがあります。飲みやすいからといって、甘い飲み物ばかりにしないようにしましょう。
母乳やミルクを飲んでいる赤ちゃんでは、自己判断で長く中止せず、少量ずつ様子を見ながら与えることがあります。水分がとれない、何度も吐く、尿が少ない場合は早めに相談してください。
脱水のサインを見逃さない

子どもは、嘔吐が続くと脱水になりやすくなります。
特に、発熱や下痢を伴う場合、暑い場所で過ごしている場合、移動中で水分がとりにくい場合は注意が必要です。
脱水が疑われるサインには、次のようなものがあります。
・尿が少ない
・尿の色が濃い
・口や唇が乾いている
・泣いても涙が少ない
・目がくぼんで見える
・ぐったりしている
・機嫌が悪い
・水分を飲めない
・飲んでもすぐ吐く
・手足が冷たい
旅行中は、トイレの回数を見落としやすくなります。最後に尿が出た時間を確認しておくと、受診の判断に役立ちます。
少量ずつ飲ませても吐いてしまう、尿が長時間出ない、ぐったりしている、口が乾いている、涙が少ない場合は、脱水が進んでいる可能性があります。
このような場合は、予定を続けず、医療機関や救急相談に連絡しましょう。
原因を考えながら予定を止める

子どもが旅行中に吐いたときは、原因を考えながら、いったん予定を止めて休ませることが大切です。
乗り物酔いで吐いた場合は、乗り物を降りて新鮮な空気を吸い、横になりすぎず、落ち着ける場所で休ませます。次の移動は、無理に急がず、吐き気が落ち着いてからにしましょう。
胃腸炎や食中毒が疑われる場合は、下痢、発熱、腹痛、周囲に同じ症状の人がいないかを確認します。タオルや食器の共有を避け、手洗いを徹底しましょう。吐いたものを片づけるときは、使い捨て手袋やビニール袋があると便利です。
熱中症が疑われる場合は、暑い場所から離れ、涼しい場所で休ませます。顔が赤い、汗が多いまたは汗が出ない、ぼーっとしている、頭痛やめまいがある場合は注意が必要です。
頭を打った後に吐いた場合は、単なる胃腸症状として考えないようにします。頭部打撲後の嘔吐、強い眠気、反応の悪さ、けいれん、ふらつき、強い頭痛がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
旅行中は、予定を優先したくなりますが、嘔吐があるときは休息を優先しましょう。
受診を考えたいサイン

旅行中に子どもが吐いたとき、次のような場合は医療機関や救急相談へ連絡しましょう。
・何度も吐く
・水分を飲めない
・飲んでもすぐ吐く
・尿が長時間出ていない
・ぐったりしている
・呼びかけへの反応が悪い
・呼吸が苦しそう
・強い腹痛がある
・お腹が強く張っている
・血が混じったものを吐く
・緑色のものを吐く
・血便がある
・高熱がある
・けいれんがある
・強い頭痛がある
・首を痛がる、首が硬い
・発疹がある
・頭を打った後に吐いた
・赤ちゃんが繰り返し吐く
・持病がある、免疫を抑える薬を使っている
特に、緑色の嘔吐、血が混じる嘔吐、強い腹痛、反応の悪さ、脱水のサイン、頭を打った後の嘔吐は注意が必要です。
また、吐き気や嘔吐が長引く場合も、旅先で相談した方が安心です。旅行中は移動や食事の調整が難しく、家庭より脱水に気づきにくいことがあります。
日本国内で判断に迷う場合は、小児救急電話相談「#8000」や地域の救急相談窓口を利用する方法があります。宿泊先のフロントに、近くの小児科、夜間休日診療所、救急外来を確認してもらうのもよいでしょう。
旅行先で医療機関に伝えること

旅行先で受診するときは、状況を整理して伝えられるようにしておくと安心です。
医療機関では、次の情報を伝えましょう。
・いつから吐いているか
・何回吐いたか
・最後に吐いた時間
・水分を飲めているか
・尿が最後に出た時間
・発熱の有無
・下痢の有無
・腹痛の場所と強さ
・頭痛や首の痛み
・頭を打ったか
・食べたもの
・周囲に同じ症状の人がいるか
・使った薬
・持病やアレルギー
・海外渡航歴
・虫刺されや動物との接触の有無
海外旅行では、食べ物や水、感染症、地域特有の病気も関係することがあります。どの国や地域に滞在したか、生水や生ものをとったか、蚊に刺されたか、動物に触れたかも伝えましょう。
医師に、今後の移動予定があることも伝えると、移動してよいか、食事や水分をどうするか、再受診の目安を相談しやすくなります。
旅行前に準備しておきたいもの

子どもの嘔吐は、旅先で突然起こることがあります。
事前に準備しておくと、慌てにくくなります。
持っていきたいものは、経口補水液、ビニール袋、使い捨て手袋、ウェットティッシュ、マスク、着替え、タオル、体温計、保険証、医療証、母子手帳、常備薬、消毒用品、携帯用のゴミ袋などです。
移動中の嘔吐に備えるなら、すぐ取り出せる場所にビニール袋、タオル、着替えを入れておきましょう。車やバス、電車では、荷物の奥に入れてしまうと間に合わないことがあります。
乗り物酔いしやすい子どもでは、出発前に小児科や薬局で酔い止めの使い方を確認しておくと安心です。年齢によって使える薬が異なるため、大人用を自己判断で使わないようにしましょう。
海外旅行では、旅行保険の連絡先、現地の医療機関、通訳サービス、常備薬の情報を確認しておきます。
まとめ:吐いた後は少量ずつ水分を試し、様子をよく見る

旅行中に子どもが吐いたときは、まず安全な姿勢をとらせ、意識、呼吸、顔色、発熱、下痢、腹痛、頭を打ったかどうかを確認します。
吐いた直後に水分をたくさん飲ませると、また吐いてしまうことがあります。少し落ち着いてから、少量ずつ、こまめに水分を試しましょう。
尿が少ない、口が乾いている、涙が少ない、ぐったりしている、水分を飲めない、飲んでもすぐ吐く場合は、脱水に注意が必要です。
何度も吐く、強い腹痛がある、緑色や血の混じったものを吐く、頭を打った後に吐いた、反応が悪い、けいれんがある場合は、旅先でも医療機関へ相談してください。
旅行中だからこそ、予定よりも子どもの体調を優先しましょう。
参考文献
『こどもの救急』(日本小児科学会)
https://kodomo-qq.jp/
『子ども医療電話相談事業(#8000)について』(こども家庭庁)
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety-actions/for-parents-reminder/03