食中毒や生ものが心配|妊娠中の旅行で注意したい食事
妊娠中に旅行へ行くとき、食事をどこまで気をつければよいのか迷うことがあります。
「旅先の海鮮を食べてもよい?」「ホテルのビュッフェは大丈夫?」「生ものやチーズは避けた方がよい?」と不安になる方もいるでしょう。
妊娠中は、体調の変化に加えて、食中毒や感染症への注意が普段より大切になります。特に、加熱が不十分な食品、保存状態が分かりにくい食品、生ハムや未加熱のナチュラルチーズなどは注意したい食品です。
旅行中は、外食や移動が増え、食べ物の保存状態や調理環境を自分で確認しにくくなります。ここでは、妊娠中の旅行で注意したい食事について解説します。
妊娠中の旅行では食事に注意したい理由

妊娠中の旅行では、普段より食事の選び方に気をつけたい場面があります。
旅行中は、外食、ビュッフェ、屋台、移動中の軽食、ホテルでの食事など、食べる環境が変わります。楽しい時間だからこそ、少しだけ慎重に選ぶことが安心につながります。
ここでは、妊娠中の旅行では食事に注意したい理由について解説します。
旅行中は食べ慣れないものが増える
旅行中は、普段食べない料理や地元の名物を食べる機会が増えます。
その中には、生もの、加熱が不十分な肉や魚介類、冷蔵で長く保存されている食品、調理後に時間がたった食品などが含まれることがあります。
妊娠中は、体調が変化しやすく、胃もたれ、吐き気、下痢、便秘なども起こりやすい時期です。旅先では、食事の楽しみと安全性のバランスを取ることが大切です。
食中毒になると旅行継続が難しくなる
食中毒では、腹痛、嘔吐、下痢、発熱などが起こることがあります。
妊娠中にこれらの症状が出ると、脱水や体力低下につながり、旅行を続けるのが難しくなることがあります。移動中や宿泊先で体調が悪化すると、受診先を探す負担も大きくなります。
旅行中は、少しでも不安がある食品は避ける、十分に加熱されたものを選ぶ、体調が悪いときは無理に食べないことが大切です。
胎児への影響が問題になる感染症もある
妊娠中の食事で特に注意したいものに、リステリアやトキソプラズマなどがあります。
リステリアは、冷蔵庫の中でも増えることがあり、妊娠中は特に注意したい食中毒菌です。未加熱のナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモン、肉や魚のパテなどは注意したい食品として挙げられています。
トキソプラズマは、加熱不十分な肉などから感染することがあります。妊娠中に初めて感染した場合、胎児に影響することがあるため、肉は中心部まで十分に加熱して食べることが大切です。
妊娠中に避けたい食べ物

妊娠中の食事では、完全に楽しみをなくす必要はありません。
ただし、食中毒や感染症のリスクが高くなりやすい食品は、旅行中だけでも避ける方が安心です。特に、加熱されていないもの、保存状態が分かりにくいもの、冷蔵で長時間置かれているものには注意しましょう。
ここでは、妊娠中に避けたい食べ物について解説します。
加熱していない肉や生ハム
生肉、レアステーキ、ユッケ、鶏刺し、加熱不十分なハンバーグ、生ハムなどは避けた方が安心です。
肉には、カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、トキソプラズマなどのリスクがあります。表面だけ焼けていても、中心部まで火が通っていない場合があります。
旅行先では、焼き加減を選べる料理は「よく焼き」で注文し、中心部までしっかり加熱されたものを選びましょう。
未加熱のナチュラルチーズやパテ
妊娠中は、加熱殺菌されていないナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモン、肉や魚のパテなどに注意が必要です。
これらは、冷蔵庫で保存され、加熱せずにそのまま食べることが多い食品です。リステリアは冷蔵庫の中でも増えることがあり、開封後や保存期間が長い食品では注意が必要です。
食べる場合は、十分に加熱された料理として提供されているかを確認しましょう。
生卵や半熟卵
生卵や半熟卵は、サルモネラなどの食中毒リスクを考えて注意したい食品です。
温泉卵、半熟卵、卵かけご飯、半熟のオムレツなどは、体調や提供環境によっては避けた方が安心です。旅先では、卵料理も十分に火が通ったものを選びましょう。
生牡蠣や加熱不十分な魚介類
生牡蠣、加熱不十分な二枚貝、十分に火が通っていない魚介類は注意が必要です。
牡蠣などの二枚貝では、ノロウイルスやA型肝炎ウイルスなどが問題になることがあります。加熱調理用の二枚貝は、中心部まで十分に加熱する必要があります。
海鮮を楽しむ場合は、刺身や生牡蠣よりも、焼き魚、煮魚、蒸し料理、鍋料理など、しっかり加熱されたものを選ぶと安心です。
生ものや海鮮を食べたいときの考え方

旅行先では、海鮮や地域の名物を楽しみにしている方もいるでしょう。
妊娠中だからといって、魚介類をすべて避ける必要はありません。ただし、生ものや保存状態が分かりにくい食品は慎重に判断することが大切です。
ここでは、生ものや海鮮を食べたいときの考え方について解説します。
生ものは無理に食べない
妊娠中の旅行では、刺身、寿司、生牡蠣、生肉などの生ものは無理に食べない方が安心です。
「せっかく来たから」と食べたくなる場面もありますが、旅行中に腹痛、嘔吐、下痢が起こると、その後の予定に大きく影響します。特に、暑い季節、海外旅行、屋外での食事、保存状態が分かりにくい食品では注意しましょう。
加熱された海鮮を選ぶ
海鮮を楽しみたい場合は、加熱された料理を選ぶとよいでしょう。
焼き魚、煮魚、魚のソテー、蒸し料理、鍋、スープ、炊き込みご飯などは選びやすいメニューです。貝類は中心部まで十分に加熱されたものを選びます。
旅先の食事は「食べられないもの探し」ではなく、「安心して楽しめるもの探し」と考えると、気持ちが少し楽になります。
水銀が多い魚にも注意する
妊娠中は、魚の水銀にも注意が必要です。
マグロ類、キンメダイ、メカジキなど、一部の魚は摂取量に注意が必要とされています。ただし、魚には良質なたんぱく質や栄養素も含まれるため、すべて避ける必要はありません。
旅行中に魚を食べる場合は、同じ種類の大型魚に偏らず、加熱された魚料理を適量楽しむのがよいでしょう。
ビュッフェやホテル朝食で気をつけたいこと

旅行中は、ホテルの朝食ビュッフェや旅館の食事を利用することがあります。
ビュッフェは便利ですが、料理が長時間置かれていることがあり、温度管理や取り分け時の衛生面に注意が必要です。
ここでは、ビュッフェやホテル朝食で気をつけたいことについて解説します。
温かい料理は温かい状態のものを選ぶ
ビュッフェでは、温かい料理は温かく保たれているものを選びましょう。
ぬるくなった料理や、長時間置かれているように見える料理は避けた方が安心です。卵料理、肉料理、魚料理などは、十分に火が通っているかを見て選びます。
冷たい料理は保存状態に注意する
サラダ、ハム、スモークサーモン、チーズ、冷製料理、デザートなどは、冷蔵管理や提供時間が気になります。
妊娠中は、冷蔵で長時間保存され、加熱せずに食べる食品に注意しましょう。特に、未加熱のナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモンなどは避ける方が安心です。
取り分け用のトングや手指衛生にも注意する
ビュッフェでは、多くの人が同じトングやスプーンを使います。
食事前には手を洗う、アルコール消毒をする、料理を取った後に再度手指を清潔にするなど、基本的な対策も大切です。
体調が悪いときや胃腸症状があるときは、無理にビュッフェでいろいろ食べず、消化のよいものを少量にしましょう。
屋台や食べ歩きで気をつけたいこと

旅行中の屋台や食べ歩きは楽しいものです。
一方で、調理環境や保存状態、手指衛生が分かりにくいことがあります。妊娠中は、普段より慎重に選ぶと安心です。
ここでは、屋台や食べ歩きで気をつけたいことについて解説します。
作り置きより加熱直後のものを選ぶ
屋台やテイクアウトでは、作り置きよりも、加熱直後に提供されるものを選びましょう。
長時間常温で置かれている食品は、細菌が増えやすくなることがあります。特に暑い季節や屋外イベントでは注意が必要です。
生野菜やカットフルーツは慎重に選ぶ
海外旅行や衛生状態が分かりにくい場所では、生野菜、カットフルーツ、氷入りの飲み物に注意しましょう。
洗浄に使われた水や保存状態が分からない場合があります。果物を食べるなら、自分で皮をむけるものを選ぶ方が安心です。
持ち歩き時間を短くする
買った食品を長時間持ち歩くと、温度が上がって細菌が増えやすくなることがあります。
すぐに食べない食品は避ける、持ち歩く時間を短くする、保冷が必要なものは無理に持ち歩かないことが大切です。
海外旅行で特に注意したい食事

海外旅行では、水や食文化、衛生環境が日本と異なることがあります。
妊娠中に海外旅行をする場合は、食事と水の安全性をいつも以上に意識しましょう。
ここでは、海外旅行で特に注意したい食事について解説します。
水と氷に注意する
海外では、水道水をそのまま飲まない方がよい地域があります。
飲み水は未開封のボトル水を選び、氷入りの飲み物にも注意しましょう。歯磨きに使う水も気になる地域では、ボトル水を使うと安心です。
生ものを避ける
海外旅行中は、生肉、生魚、生卵、生野菜、カットフルーツなどを避ける方が安心です。
特に、衛生環境が分かりにくい場所では、十分に加熱された料理を選びます。熱い状態で提供される料理は比較的選びやすい食事です。
体調が悪いときは無理に食べない
妊娠中は、旅行中の疲れや気候の変化で体調が揺れやすくなります。
吐き気、腹痛、下痢、発熱があるときは、無理に現地料理を食べず、水分補給と休息を優先しましょう。症状が強い場合は、旅行保険の窓口や医療機関に相談します。
妊娠中の旅行前に準備しておきたいもの

食中毒や体調不良を完全に防ぐことはできません。
ただし、旅行前に準備しておくことで、体調が崩れたときに慌てにくくなります。
ここでは、妊娠中の旅行前に準備しておきたいものを紹介します。
母子健康手帳と保険証
旅行中も、母子健康手帳、健康保険証、診察券、お薬手帳を持参しましょう。
妊娠週数、これまでの経過、内服薬、アレルギーなどは、旅先で受診する際に大切な情報になります。
海外旅行の場合は、妊娠中の医療対応を含む旅行保険かどうかも事前に確認しておくと安心です。
食事や体調管理に役立つもの
旅行には、次のようなものを準備しておくと安心です。
- 水分補給用の飲み物
- 個包装の軽食
- ウェットティッシュ
- 携帯用アルコール
- ビニール袋
- 常用薬
- 医師から許可された薬
- 体温計
- 母子健康手帳
- 保険証
- 旅行保険の連絡先
妊娠中に使える薬は限られることがあります。自己判断で市販薬を使う前に、主治医や薬剤師に確認しておきましょう。
近くの医療機関を確認しておく
旅行前に、宿泊先周辺の産婦人科、救急外来、夜間休日診療を確認しておくと安心です。
特に、妊娠中期以降や持病がある場合、海外旅行の場合は、事前に受診先や相談先を調べておきましょう。
受診や相談を考えたい症状

旅行中に食事の後で体調を崩した場合、どこまで様子を見るか迷うことがあります。
妊娠中は、脱水や発熱、腹痛などを軽く見すぎないことが大切です。
ここでは、受診や相談を考えたい症状について解説します。
嘔吐や下痢が続く
嘔吐や下痢が続く場合は、脱水に注意が必要です。
水分が取れない、尿が少ない、めまいがある、ぐったりしている場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
発熱や強い腹痛がある
発熱、強い腹痛、血便、強い頭痛、意識がぼんやりするなどがある場合は、早めの受診を考えます。
食中毒だけでなく、妊娠中の体調変化や別の病気が関係していることもあります。旅行中だからと無理に予定を続けず、体調を優先しましょう。
お腹の張りや出血がある
妊娠中に、お腹の張りが続く、出血がある、強い下腹部痛がある、胎動がいつもと違うと感じる場合は、早めに産婦人科へ相談しましょう。
食事がきっかけに見えても、妊娠経過に関わる症状が隠れていることがあります。
妊娠中の旅行で食事を楽しむコツ
妊娠中の旅行では、食事に注意点が多く感じられるかもしれません。
しかし、避けたい食品を知っておけば、安心して楽しめる選択肢もたくさんあります。
ここでは、妊娠中の旅行で食事を楽しむコツについて解説します。
加熱料理を中心に選ぶ
旅行中は、加熱された料理を中心に選びましょう。
焼く、煮る、蒸す、揚げるなど、十分に火が通った料理は選びやすいメニューです。魚介類も、刺身ではなく焼き魚や煮魚、鍋料理などにすると楽しみやすくなります。
食べすぎを避ける
旅行中は、つい食べすぎてしまうことがあります。
妊娠中は胃もたれや逆流感、便秘が起こりやすいこともあります。少量ずつ、無理なく食べることを意識しましょう。
不安な食品は今回は見送る
食事で迷ったときは、「今回は見送る」という判断も大切です。
旅行の思い出は、食事だけではありません。安心して過ごせることも大切な旅の価値です。迷う食品は産後の楽しみに取っておく、くらいの気持ちでもよいでしょう。
妊娠中の旅行食チェックリスト

妊娠中の旅行では、食事の選び方を整理しておくと安心です。
避けたい食品
- 生肉、加熱不十分な肉
- 生ハム
- 未加熱のナチュラルチーズ
- 肉や魚のパテ
- スモークサーモン
- 生卵、半熟卵
- 生牡蠣
- 加熱不十分な魚介類
- 保存状態が分からない作り置き食品
- 衛生状態が分かりにくい生野菜やカットフルーツ
選びやすい食品
- 十分に加熱された肉料理
- 焼き魚、煮魚、蒸し魚
- 温かいスープ
- 炊きたてのご飯
- うどん、そば、パスタなどの温かい麺類
- しっかり火が通った卵料理
- 皮をむける果物
- 個包装の軽食
- 未開封のボトル水
食事前後の確認
- 手を洗った
- 加熱状態を確認した
- 作り置きではないか確認した
- 保存状態が不安な食品は避けた
- 食べすぎていない
- 体調が悪いときは無理に食べていない
- 水分をこまめに取っている
まとめ

妊娠中の旅行では、食中毒や生ものへの不安から、食事をどう選べばよいか迷うことがあります。
基本は、十分に加熱されたものを選び、保存状態が分かりにくい食品や生ものを避けることです。生肉、生ハム、未加熱のナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、スモークサーモン、生卵、生牡蠣、加熱不十分な魚介類などは注意しましょう。
旅行中は、ビュッフェ、屋台、食べ歩き、海外の水や氷など、普段より判断が難しい場面があります。不安な食品は無理に食べず、加熱された料理や個包装の食品を選ぶと安心です。
嘔吐や下痢が続く、水分が取れない、発熱や強い腹痛がある、お腹の張りや出血がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
妊娠中の旅行では、食事を我慢することだけが目的ではありません。安全に楽しめるものを選び、無理のない旅にすることが大切です。
参考文献・参考サイト
- 厚生労働省:食中毒
- 東京都保健医療局 食品衛生の窓:妊娠中の方へ リステリア食中毒にご注意ください
- 食品安全委員会:気を付けたい妊娠中の食事 生ハム、加熱していないナチュラルチーズなど
- 食品安全委員会:気を付けたい妊娠中の食事 加熱不十分な肉〔寄生虫 トキソプラズマ〕